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【易】 第24卦「地雷復(ちらいふく)」– 再生の光が差し、新たな希望が芽吹く転換点

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【易の叡智 第24卦】「地雷復(ちらいふく)」– 再生の光が差し、新たな希望が芽吹く転換点

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 地雷復(ちらいふく)

3. 4. 【この卦のメッセージ】
 上卦(じょうか):坤(こん) – 地、受容、柔順、母性、大衆
下卦(かか):震(しん) – 雷、動く、奮い立つ、長男、一陽来復

全体のイメージ: 広大な大地(坤)の、その一番下に、力強い雷(震)が一筋の陽の光として、再び姿を現した。この「地雷復」の姿は、まるで長い冬が終わり、凍てついた大地の下から、春の雷鳴と共に新しい生命の息吹が力強く蘇ってくる様子を象徴しています。「復」という文字は、「元来た道に復(かえ)る」「回復する」「繰り返す」といった意味合いを持ちます。 前の卦「山地剥」では、陰の力が極まり、陽の光が今にも消え入りそうになっていましたが、この「地雷復」では、その陰が極まったところから、初めての一陽(初九の陽爻)が力強く再生し、再び陽の気が循環を始める、まさに「一陽来復(いちようらいふく)」の瞬間です。これは、どんなに困難な状況や暗い時期も永遠には続かず、必ずや希望の光が差し込み、物事が再び良い方向へと転じ始める、という宇宙の大きなサイクルの始まりを示しています。

 

1. 卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):復。亨。出入无疾。朋來无咎。反復其道、七日來復。利有攸往。

書き下し文: 復(ふく)は亨(とお)る。出入(しゅつにゅう)疾(やまい)なし。朋(とも)来(きた)りて咎(とが)なし。其(そ)の道(みち)を反復(はんぷく)し、七日(なぬか)にして来(きた)り復(かえ)る。往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに利(よろ)し。

現代語訳: 復(回復し、再び始まる時)は、願いは通る。出入りもスムーズで妨げはない。仲間がやって来ても咎めはないだろう。その道(自然の運行)は繰り返し、七日経てば(一定の期間が過ぎれば)再び回復する。積極的に目的を持って進んでいくのが良い。

ポイント解説:
この卦辞は、「復」の時が、閉塞した状況が終わり、物事が再びスムーズに通り始める(亨る)ことを告げています。「出入疾なし」とは、内外の交流が活発になり、妨げがなくなること。「朋来りて咎なし」とは、同じ志を持つ仲間が集まり、協力し合えるようになることを意味します。「其の道を反復し、七日にして来り復る」とは、天地自然の運行は循環しており、一定の周期(七日はその一例)を経て、必ず良い状態へと回復するという、宇宙の法則を示しています。そして、このような回復と再出発の時であるからこそ、「往く攸有るに利し」、つまり、明確な目的を持って積極的に行動していくことが推奨されるのです。

2. 爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初九(しょきゅう):

遠(とお)からずして復(かえ)る。祗(おお)いに悔(く)ゆるなし。元吉(げんきつ)。

原文:不遠復。无祗悔。元吉。

書き下し文:遠(とお)からずして復(かえ)る。祗(おお)いに悔(く)ゆることなし。元吉(げんきつ)。

現代語訳:道を踏み外しても、遠くへ行かないうちにすぐに正しい道に復帰する。大きな後悔をすることはない。非常に素晴らしい吉である。

ポイント解説:
「復」の始まり。この卦の主役である最初の陽爻です。もし過ちを犯したり、道に迷ったりしても、まだそれほど遠くへ行っていないうちに、すぐに気づき、自力で正しい道へと立ち返ることができる状態です。そのため、大きな後悔をすることもなく(祗いに悔ゆることなし)、根本からやり直せる素晴らしい吉運(元吉)に恵まれます。早期の自己修正能力の大切さを示しています。

六二(りくじ):

休(よ)く復(かえ)る。吉(きち)。**

原文:休復。吉。

書き下し文:休(きゅう)復(ふく)す。吉(きち)。

現代語訳:美しく、安らかに正しい道に復帰する。吉である。

ポイント解説:
初九の陽爻に素直に従い、無理なく、そして美しく正しい道へと復帰していく様です。「休」には「美しい」「善い」「安らか」といった意味があります。周囲の良い影響を受け入れ、自然な形で善へと向かうことができるため、吉(吉)です。善き手本に倣い、穏やかに自分を改善していくことの素晴らしさを示しています。

六三(りくさん):

頻(しき)りに復(かえ)る。厲(あやう)うけれども咎(とが)なし。

原文:頻復。厲无咎。

書き下し文:頻(ひん)に復(ふく)す。厲(あやう)うけれども咎(とが)なし。

現代語訳:何度も道を踏み外しては、その度に復帰する。危うい状況ではあるが、最終的には咎めはない。

ポイント解説:
この爻は、やや不安定で、何度も過ちを繰り返しては、その都度反省して正しい道に戻ろうとする(頻りに復る)状態です。その様子は危なっかしく(厲うけれども)、周囲を心配させるかもしれませんが、それでも最終的には正しい道に戻ろうとする意志があるため、大きな咎め(咎なし)には至りません。失敗を繰り返しても、諦めずに立ち返ろうとする姿勢の大切さを示しています。

六四(りくし):

中行(ちゅうこう)して独(ひと)り復(かえ)る。

原文:中行獨復。

書き下し文:中行(ちゅうこう)して独(ひと)り復(ふく)す。

現代語訳:(周囲はまだ迷いの中にあっても)一人だけ中正の道を歩み、正しい道に復帰する。

ポイント解説:
周囲の陰爻たち(六三、六五)がまだ迷いや過ちの中にある中で、この六四だけが、陽爻である初九や九五(本来応じるべき相手ではないが、善の象徴として)の善性に感化され、一人だけでも正しい道(中行)へと立ち返る(独り復る)ことを示しています。周囲に流されず、自らの良心に従って善を選ぶ、孤高ながらも尊いあり方です。

六五(りくご):

敦(あつ)く復(かえ)る。悔(くい)なし。

原文:** 六五。敦復。无悔。

書き下し文:敦(とん)く復(ふく)す。悔(くい)なし。

現代語訳:篤く誠実な心で、正しい道に復帰する。後悔することはない。

ポイント解説:
君主の位にあり、柔順中正の徳を備えています。この爻は、非常に篤く、誠実な心(敦く)をもって、完全に正しい道へと復帰している状態です。そこには何の迷いもなく、心からの納得があるため、後悔することもありません(悔なし)。真摯な反省と、本質への回帰がもたらす、清々しい心の状態を示しています。

上六(じょうりく):

復(かえ)るに迷(まよ)う。凶(きょう)。災眚(さいせい)有(あ)り。師(いくさ)を行(や)るに用(もち)うれば、終(つい)に大(おおい)に敗(やぶ)る有り。其(そ)の国君(こっくん)に于(おい)て凶(きょう)。十年(じゅうねん)征(せい)するに克(あた)わず。**

原文:迷復。凶。有災眚。用行師、終有大敗。以其國君凶。至于十年不克征。

書き下し文:復(かえ)るに迷(まよ)う。凶(きょう)。災眚(さいせい)有(あ)り。師(し)を行(や)るに用(もち)うれば、終(つい)には大(おおい)に敗(やぶ)るること有(あ)り。其(そ)の国君(こっくん)に于(おい)て凶(きょう)。十年(じゅうねん)に至(いた)るまで征(せい)するに克(あた)わず。

現代語訳:正しい道に復帰しようとしても、迷ってしまい、いつまでも立ち返ることができない。凶である。災いや過ちがあるだろう。このような時に軍隊を動かせば、最後には大敗北を喫し、その国の君主にとっても凶となる。十年経っても征伐することはできないだろう。

ポイント解説:
「復」の時の最終段階ですが、残念ながら正しい道へ復帰できず、迷い続けている(復るに迷う)状態です。これは非常に良くない(凶)ことであり、様々な災いや過ち(災眚有り)を引き起こします。このような時に、無理に大きな行動(師を行る)を起こせば、大失敗し、指導者(国君)にも凶が及び、長期にわたって(十年)事態を好転させることはできません。過ちを改め、正しい道に立ち返る機会を逸してしまうことの恐ろしさを強く警告しています。

3. 大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文): 象曰。雷在地中、復。先王以至日閉關、商旅不行、后不省方。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、雷(らい)地中(ちちゅう)に在(あ)るは復(ふく)なり。先王(せんのう)以(もっ)て至日(しじつ)に關(かん)を閉(と)ざし、商旅(しょうりょ)行(ゆ)かず、后(きみ)も方(ほう)を省(かえり)みず。

現代語訳: 象伝は言う。雷が地中にあって、再び活動を始めようとしているのが復の形である。古代の賢王たちはこれに倣(なら)い、冬至(至日)の日には関所を閉じ、商人も旅人も旅に出ず、君主も地方の視察を行わなかった。

ポイント解説:
大地の下で雷が鳴り響き、春の訪れと共に新しい生命が活動を開始しようとしている。これが「復」の象徴です。古代の賢王たちは、この自然界の転換期である冬至(陰が極まり陽が初めて生じる日)には、関所を閉ざし、商業活動や旅を控えさせ、君主自身も視察などの公務を休むことで、新たに生まれたばかりの陽の気(生命力や善の芽生え)を静かに養い、その成長を妨げないように配慮しました。これは、新しい始まりや回復の初期段階においては、無理に活動せず、静かにエネルギーを蓄え、その芽を大切に育むことの重要性を示しています。

4. 【むすび】

地雷復の卦は、わたしたちの人生における「再生」「再出発」「回復」という、希望に満ちた転換点について、深く温かい智慧を授けてくれます。

  • 1. どんな困難の後にも、「復(かえ)る」時は必ず訪れる – 希望の光を信じよう: わたしたちの人生には、時に長く暗いトンネル(否の時など)を経験することもあるかもしれません。しかし、地雷復の卦は、どんな困難な状況も永遠には続かず、必ず「一陽来復」の時、つまり希望の光が差し込み、物事が再び良い方向へと転じ始める時がやって来ることを、力強く教えてくれます。その宇宙の大きなサイクルを信じ、決して希望を失わないことが大切です。
  • 2. 「遠からずして復る」 – 過ちに気づいたら、すぐに軌道修正する勇気を: 初九の爻が示すように、もしわたしたちが少し道を踏み外したり、過ちを犯したりしても、それに早く気づき、すぐに正しい道へと立ち返るならば、大きな問題にはなりません。完璧であることではなく、むしろ過ちから学び、素早く自己修正していく、その柔軟性と勇気の中にあるのです。

地雷復の時は、わたしたちの内なる生命力が、冬の眠りから覚め、再び力強く活動を開始する、希望に満ちた「春の訪れ」です。この再生のエネルギーを心に感じ、過去の過ちからは素直に学び、そして未来への確かな一歩を、仲間と共に、そして感謝の心と共に踏み出していきましょう。そこには必ず、昨日よりも新しい、そしてより善い自分が待っているはずですから。


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