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【易経】第42卦「風雷益(ふうらいえき)」– 恵みの風と行動の雷、益々良いほうへと加速する時

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【易経】第42卦「風雷益(ふうらいえき)」– 恵みの風と行動の雷、益々良いほうへと加速する時

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 風雷益(ふうらいえき)

3.【この卦のメッセージ】
上卦(じょうか):巽(そん) – 風、木、入る、従順、長女
下卦(かか):震(しん) – 雷、動く、奮い立つ、長男
全体のイメージ: 下で雷(震)がゴロゴロと鳴り響き、万物を奮い立たせ、活動を開始させる。その上を、恵みの風(巽)が隅々まで吹き渡り、その動きを助け、潤いと利益を広げていく。この「風雷益」の姿は、まさに天地の間にダイナミックなエネルギーが満ち溢れ、あらゆるものが「ますます益し」、成長し、発展していく吉兆の時をわたしたちに示しています。 下の「雷」は、わたしたちの内なる情熱や行動力、新しいことへの挑戦。上の「風」は、その行動を後押しする周囲の助けや、時代の追い風、あるいはわたしたち自身の柔軟性や、物事の本質に穏やかに浸透していく力を象徴します。この二つが調和することで、個人も社会も、そして自然界も、素晴らしい「益」を得ていくのです。

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卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):益。利有攸往。利渉大川。

書き下し文:益(えき)は往(ゆ)く攸(ところ)有るに利(よろ)し。大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よろ)し。

現代語訳:益の時は、積極的に目的を持って進んでいくのが良い。大きな川を渡るような困難な事業も、やり遂げると良い。

ポイント解説:
この卦辞は、非常に明快かつ力強く、行動することの吉を示しています。「益」とは、文字通り利益や増加、発展を意味し、この時にあたっては、明確な目標(往く攸)を持って前進することが推奨されます。「大川を渉る」という言葉は、困難やリスクを伴うような大きな挑戦であっても、この時期ならばそれを乗り越え、成功を収めることができるという、大きな励ましです。停滞せず、勇気を持って一歩を踏み出すことが、さらなる「益」を生むのです。

爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初九(しょきゅう):

大(おおい)いに作(な)すに用(もち)うるに利(よろ)し。元吉(げんきつ)にして咎(とが)なし。

原文:利用為大作。元吉无咎。

書き下し文:大(おおい)いに作(な)すに用(もち)うるに利(よろ)し。元吉(げんきつ)にして咎(とが)なし。

現代語訳:大きな事業を始めるのに良い時である。大いに吉であり、咎めもない。

ポイント解説:
物語の始まり、益の時運の最初の段階です。積極的に大きな計画(大作)に着手する絶好の機会であることを示しています。ためらうことなく、勇気を持って行動を起こせば、素晴らしい結果(元吉)が得られ、何の心配もいりません(咎なし)。新しいことを始めるエネルギーに満ちています。

六二(りくじ):

或(あるい)は之(これ)を益(ま)す。十朋(じっぽう)の亀(かめ)も違(たが)うこと克(あた)わず。永(なが)く貞(ただ)しければ吉(きち)。王(おう)用(もっ)て帝(てい)に享(きょう)す、吉(きち)。**

原文:或益之、十朋之龜、弗克違。永貞吉。王用享于帝、吉。

書き下し文:或(あるい)は之(これ)を益(ま)す。十朋(じっぽう)の亀(かめ)も違(たが)うこと克(あた)わず。永(なが)く貞(ただ)しければ吉(きち)。王(おう)用(もっ)て帝(てい)に享(きょう)し吉(きち)。

現代語訳:誰かがこれを益してくれる。それは非常に価値のある(十朋の亀)ことであり、誰もそれに逆らうことはできない。長く正しく道を守れば吉である。王がこれを用いて天帝を祀れば吉である。

ポイント解説:
自分自身の力だけでなく、外部からの助けや予期せぬ幸運によって、大きな利益や発展が得られる時です。その恵みは非常に貴重で、抗いがたいほどの勢いがあります。この幸運を長く維持するためには、正しい道を守り続けること(永く貞しければ吉)が大切です。また、得た恵みを独り占めせず、公のため、あるいはより高次の目的のために用いる(王用て帝に享す)ことで、さらに大きな吉を招きます。

六三(りくさん):

之(これ)を益(ま)すに凶事(きょうじ)を用(もち)う。咎(とが)なし。孚(まこと)有りて中行(ちゅうこう)し、公(こう)に告(つ)ぐるに圭(けい)を用(もち)う。

原文:益之用凶事。无咎。有孚中行、告公用圭。

書き下し文:之(これ)を益(ま)すに凶事(きょうじ)を用(もち)う。咎(とが)なし。孚(まこと)有(あ)りて中行(ちゅうこう)し、公(こう)に告(つ)ぐるに圭(けい)を用(もち)う。

現代語訳:利益を得るために、あえて不吉なことや困難なことに取り組む。そうしても咎めはない。ただし、真心を持って中正の道を行い、君主に報告する際には礼を尽くすべきである。

ポイント解説:
この爻は少し特殊で、一見ネガティブな状況(凶事)が、結果的に「益」に繋がることを示唆しています。例えば、災害復興や困難な改革など、大変な労力を伴うことにあえて取り組むことで、大きな成果や信頼を得るような状況です。ただし、その際には真心(孚有り)と中正な道(中行)を貫き、礼儀を尽くす(公に告ぐるに圭を用う)ことが重要です。困難な状況だからこそ、誠実さが求められます。

六四(りくし):

中行(ちゅうこう)すれば、公(こう)に従(したが)うことを告(つ)ぐ。依(よ)りて国(くに)を遷(うつ)すに用(もち)うるに利(よろ)し。

原文:中行、告公從。利用為依遷國。

書き下し文:中行(ちゅうこう)すれば、公(こう)に従(したが)うことを告(つ)げらる。依(よ)りて国(くに)を遷(うつ)すに用(もち)うるに利(よろ)し。

現代語訳:中正の道を行けば、君主もそれに従うだろうと告げられる。信頼を得て、国を移すような大きな事業を任されるのにも良い。

ポイント解説:
公平で偏りのない中正の道(中行)を歩むことで、上の者(公)からの信頼を得て、重要な役割を任される時です。「国を遷す」とは、都を移すような国家的な大事業の比喩であり、それほど大きな変化や改革を、周囲の協力を得ながら成し遂げられる可能性を示しています。私心なく公に尽くす姿勢が、大きな事を成す鍵です。

九五(きゅうご):

孚(まこと)有りて心(こころ)を恵(めぐ)む。問うこと勿(なか)れ元吉(げんきつ)。孚(まこと)有りて我(わ)が德(とく)に恵(めぐ)あり。

原文:有孚惠心。勿問元吉。有孚惠我德。

書き下し文:孚(まこと)有(あ)りて心(こころ)を恵(めぐ)む。問うこと勿(なか)れ元吉(げんきつ)。孚(まこと)有(あ)りて我(わ)が德(とく)に恵(めぐ)あり。

現代語訳:真心があり、恵み深い心を持っている。疑うことなく大いに吉である。真心があれば、人々も我が徳に恵みを感じ、従うだろう。

ポイント解説:
この卦の中心であり、最も良い位置です。真心(孚有り)と、他者に恵みを与えようとする広い心(心を恵む)を持っていれば、結果を問うまでもなく(問うこと勿れ)、最高に良い結果(元吉)が得られます。あなたのその誠実で恵み深い徳(我が德に恵あり)は、自然と周囲の人々に伝わり、彼らもまたあなたに心からの信頼と協力を寄せてくれるでしょう。リーダーとして、あるいは他者を導く者として、最高のあり方を示しています。

上九(じょうきゅう):

之(これ)を益(ま)すこと莫(な)し、或(あるい)は之(これ)を撃(う)つ。心(こころ)を立(た)つること恒(つね)勿(な)からしむれば凶(きょう)。

原文:莫益之、或撃之。立心勿恆。凶。

書き下し文:之(これ)を益(ま)すこと莫(な)し、或(あるい)は之(これ)を撃(う)つ。心(こころ)を立(た)つること恒(つね)勿(な)からしむれば凶(きょう)。

現代語訳:もはやこれ以上益することはない、それどころか誰かがこれを攻撃してくるかもしれない。志を立てても長続きしないようでは、凶である。

ポイント解説:
益の時運が極まり、これ以上進むべきところがない状態です。利益を追求しすぎたり、自己満足に陥ったりすると、かえって周囲からの反発や攻撃(或は之を撃つ)を招く危険性があります。また、この段階で初心を忘れ、志が揺らいだり、一貫性がなくなったりする(心を立つること恒勿からしむれば)と、これまでの努力も水泡に帰し、凶運を招きます。足るを知り、得たものを守り、そして新たな状況への謙虚な適応が求められます。

【風雷益(ふうらいえき)の彖伝】〜全体像〜

原文 彖曰。益、損上益下、民說无疆。自上下下、其道大光。利有攸往、中正有慶。利渉大川、木道乃行。益動而巽、日進无疆。天施地生、其益无方。凡益之道、與時偕行。

書き下し文 彖(たん)に曰(いわ)く、益(えき)は、上(かみ)を損(そん)し下(しも)を益(えき)し、民(たみ)説(よろこ)ぶこと疆(かぎり)なし。上(かみ)より下(しも)に下(くだ)り、其(そ)の道(みち)大(おおい)に光(かがや)く。往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに利(よろ)しとは、中正(ちゅうせい)にして慶(よろこ)び有(あ)ればなり。大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よろ)しとは、木(もく)の道(みち)乃(すなわち)行(おこな)わるればなり。益(えき)は動(うご)きて巽(したが)い、日(ひ)に進(すす)むこと疆(かぎり)なし。天(てん)施(ほどこ)し地(ち)生(しょう)じ、其(そ)の益(えき)は方(ほう)无(な)し。凡(およ)そ益(えき)の道(みち)は、時(とき)と偕(とも)に行(おこな)わる。

現代語訳 彖伝は言う。益とは、上のものを損ない、下のものを益することであり、民の喜びは限りない。上の者が下へとその恵みを下ろし、その道は非常に光り輝くのである。「目的を持って進んでいくのが良い」というのは、(中心となる爻が)中正の徳を備え、それによって喜びがあるからである。「大きな川を渡るのに良い」というのは、船という木の道具の道が、まさに行われるからである。益の時は、力強く動き(震)、かつ、柔順に従い(巽)、その進歩は日に日に限りなく進んでいく。天が恵みを施し、地が万物を生み出すように、その利益は特定の場所に留まることなく、あらゆる方向へと及ぶ。およそ、この益の道というものは、常に時と共に移り変わっていくものである。

大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。風雷、益。君子以見善則遷、有过則改。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、風雷(ふうらい)は益(えき)なり。君子(くんし)以(もっ)て善(ぜん)を見(み)ては則(すなわ)ち遷(うつ)り、過(あやま)ち有(あ)りては則(すなわ)ち改(あらた)む。

現代語訳: 象伝は言う。風と雷が互いに力を増し合うのが益の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、善いことを見習ってはそれに移り、過ちがあれば速やかにそれを改める。

ポイント解説:
これぞまさしく「益々善成」の真髄を語る言葉です!風が雷の勢いを助け、雷が風を巻き起こすように、互いに影響し合い、力を増していくのが「益」の姿です。これを見た君子は、他者の善い行いや考え方(善)を見れば、ためらわずにそれを見習い、自分のものとして取り入れ(遷り)、もし自分自身に過ちや至らない点(過ち)があれば、速やかに、そして潔くそれを改める(改む)のです。この絶え間ない自己変革の姿勢こそが、真の「益」を生み出す道であることを教えています。

【むすび】

風雷益の卦は、わたしたちの人生に「成長」「発展」「相互扶助」そして「自己変革」という、希望に満ちた素晴らしいエネルギーをもたらしてくれます。

  • 1. 小さな「善」を見つけて、今日から真似してみよう: 大象伝の教えは、決して難しいことではありません。わたしたちの周りには、お手本となるような素晴らしい行いや考え方がたくさんあります。誰かの優しい言葉遣い、仕事への真摯な取り組み、困難に立ち向かう勇気…。そんな「善」を見つけたら、まずはそれを素直に「素敵だな」と感じ、そして「自分も少しだけ真似してみよう」と、小さな一歩を踏み出してみませんか。その積み重ねが、わたしたち自身を確実に「益」していきます。
  • 3. 「与えること」で「益」を得る、喜びの循環を体験しよう: 風雷益は、他者を益することが、巡り巡って自分自身の利益にも繋がることを教えてくれます。わたしたちが持つ知識や経験、時間や温かい気持ちを、誰かのために少しだけ使ってみる。その小さな「与える」という行動が、思いがけない感謝や新しい繋がり、そして自分自身の心の成長という、かけがえのない「益」となって返ってくることを、ぜひ体験してみてください。
  • 4. 「変化の風」と「行動の雷」を恐れず、前へ進もう: 風雷益の時は、積極的に行動し、変化を恐れずに前進することが吉とされます。わたしたちの心の中に、新しいことに挑戦したいという「雷」のような衝動が生まれたなら、そしてそれを後押しするような「風」のようなチャンスや支援を感じたなら、勇気を持って一歩を踏み出しましょう。その先には、きっと素晴らしい「益」が待っています。

風雷益の卦は、わたしたちが停滞から抜け出し、互いに助け合い、そして常に自己を更新し続けることで、無限に成長し発展していけるという、力強くも温かいメッセージを投げかけてくれています。この卦のエネルギーを心に満たし、わたしたちの毎日を、そして未来を、陽明の輝きで照らしていきましょう。