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【易経】 第55卦「雷火豊(らいかほう)」– 豊穣の頂点で輝き、感謝と共に次代を照らす太陽

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【易経】 第55卦「雷火豊(らいかほう)」– 豊穣の頂点で輝き、感謝と共に次代を照らす太陽

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 雷火豊(らいかほう)

3. 【この卦のメッセージ】 
上卦(じょうか):震(しん) – 雷、動く、奮い立つ、長男、威力 *
下卦(かか):離(り) – 火、麗(つく)、明知、太陽、文明 *
全体のイメージ: 下にある明るく輝く火(離、太陽の象徴)が、その上に位置する雷(震)の激しい動きと共鳴し、その威力を増幅させている。この「雷火豊」の姿は、まるで天空で太陽が最も高く昇り、その光と熱が地上を遍く照らし、同時に雷鳴が轟き渡って万物を奮い立たせるような、エネルギーと光明が最高潮に達した、壮大で華々しい情景を象徴しています。「豊」という文字は、豆(たかつき:供物を盛る器)の上に豊かに物が盛り付けられている形を表し、「豊か」「盛ん」「満ち足りる」といった意味合いを持ちます。 これは、わたしたちの努力が結実し、才能が最大限に開花し、物質的にも精神的にも、そして社会的にも頂点を極めるような、まさに「人生の豊穣期」を示しています。しかし、太陽が中天に達すれば、やがては傾き始めるように、この卦には、盛者必衰の理と、その頂点にある時の正しい心の持ちようが問われているのです。

 

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卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):豐。亨。王假之。勿憂。宜日中。

書き下し文:豐(ほう)は亨(とお)る。王(おう)之(これ)に假(いた)る。憂(うれ)うること勿(なか)れ。日中(にっちゅう)するに宜(よろ)し。

現代語訳: 豊(盛大な時)は、願いは通る。王でさえ、この盛大な時に至ることができる。しかし、(この状態が永遠ではないことを)憂えることはない。太陽が中天で輝くように、今この盛んな時を(公平に、そして正しく)享受するのが良い。

ポイント解説:
この卦辞は、「豊」の時が、あらゆる願いが成就する(亨る)素晴らしい時期であることをまず肯定しています。王でさえ、このような盛大な境地に到達できる(王之に假る)のです。しかし、その後に続く「憂うること勿れ、日中するに宜し」という言葉が非常に重要です。太陽が最も高く昇り、全てを照らし出す「日中」のように、この豊かさの頂点を、不安や心配(憂うること勿れ)なく、公明正大に、そしてその恵みを遍く分かち合うように享受し、その役割を全うすることが肝要であると教えています。盛んな時もいずれは陰りが見えることを知った上で、今この瞬間を最大限に輝かせることが大切なのです。

爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初九(しょきゅう):

其(そ)の配主(はいしゅ)に遇(あ)う。旬(じゅん)と雖(いえど)も咎(とが)なし。往(ゆ)けば尚(たっと)ばるること有(あ)り。

原文:遇其配主。雖旬无咎。往有尚。

書き下し文:其(そ)の配主(はいしゅ)に遇(あ)う。旬(じゅん)と雖(いえど)も咎(とが)なし。往(ゆ)けば尚(しょう)ある。

現代語訳:自分にふさわしい協力者やパートナーに出会う。たとえ対等な関係(同じ陽爻同士)であっても咎めはない。進んでいけば、尊敬されることがあるだろう。

ポイント解説:
「豊」の始まり。まだ力は小さいですが、自分と志を同じくし、協力し合える素晴らしいパートナー(配主)と出会う時です。たとえ同じような力を持つ者同士(旬)であっても、互いに尊重し合い、協力すれば、咎めはありません。積極的に行動し、その関係を深めていけば(往けば)、周囲からも認められ、尊敬される(尚ばるること有り)でしょう。良き出会いと協力の始まりです。

六二(りくじ):

其(そ)の蔀(おお)いを豊(ゆた)かにす。日中(にっちゅう)斗(と)を見(み)る。往(ゆ)けば疑疾(ぎしつ)を得(う)。孚(まこと)有(あ)りて發(ひら)けば若(も)しくは吉(きち)。

原文:豐其蔀。日中見斗。往得疑疾。有孚發若、吉。

書き下し文:其(そ)の蔀(ほう)を豊(ほう)にす。日中(にっちゅう)斗(と)を見(み)る。往(ゆ)けば疑疾(ぎしつ)を得(う)。孚(まこと)有(あ)りて發(はっ)すれば若(も)しくは吉(きち)。

現代語訳:覆い(日よけの幕)を大きく張って、真昼なのに北斗七星が見えるほど暗くしてしまう。このまま進めば、疑いや病を得るだろう。しかし、真心があってそれが発揮されるならば、吉となる。

ポイント解説:
この爻は、豊かさの影の部分、あるいは賢明な君主(六五の陰爻)が、臣下(この六二)の才能が強すぎること(下の離の火)を警戒し、その光を覆い隠している状況を示します。「日中斗を見る」とは、真昼なのに星が見えるほど暗い、つまり君主の明が臣下によって覆われている、あるいは臣下が君主を疑っている状態です。このような時に強引に進めば(往けば)、疑いや病(疑疾)を招きます。しかし、真心(孚有り)をもって、その誠意が明らかになるように努める(發けば若しくは)ならば、状況は好転し、吉となります。

九三(きゅうさん):

其(そ)の沛(おお)いを豊(ゆた)かにす。日中(にっちゅう)沬(まい)を見(み)る。其(そ)の右肱(うこう)を折(お)る。咎(とが)なし。

原文:豐其沛。日中見沬。折其右肱。无咎。

書き下し文:其(そ)の沛(はい)を豊(ほう)にす。日中(にっちゅう)沬(まい)を見(み)る。其(そ)の右肱(ゆうこう)を折(せつ)す。咎(とが)なし。

現代語訳:雨雲が空を覆い、真昼なのに小さな星(沬)が見えるほど暗い。まるで右腕を折ったように、思うように動けない。しかし、咎めはない。

ポイント解説:
六二よりもさらに暗く、不運な状況です。雨雲(沛)が太陽を覆い隠し、真昼なのに薄暗く、小さな星しか見えない。これは、才能ある者が、不遇な状況や賢明でない上司によって、その力を発揮できない状態の比喩です。右腕を折られたように、何もできず無力感に苛まれるかもしれません。しかし、この不遇は本人の責任ではないため、咎めはありません。耐え忍び、時を待つしかありません。

九四(きゅうし):

其(そ)の蔀(おお)いを豊(ゆた)かにす。日中(にっちゅう)斗(と)を見(み)る。其(そ)の夷主(いしゅ)に遇(あ)う。吉(きち)。**

原文:豐其蔀。日中見斗。遇其夷主。吉。

書き下し文:其(そ)の蔀(ほう)を豊(ほう)にす。日中(にっちゅう)斗(と)を見(み)る。其(そ)の夷主(いしゅ)に遇(あ)う。吉(きち)。

現代語訳:覆いが大きく、真昼なのに北斗七星が見えるほど暗い。しかし、そこで自分と同じような賢明な仲間(夷主)に出会う。吉である。

ポイント解説:
六二と同様に、才能が覆い隠されている暗い状況です。しかし、ここでは自分と同じように賢明で、志を同じくする仲間(夷主)と出会うことができます。互いに理解し合い、協力し合うことで、この困難な状況を乗り越え、やがては良い結果(吉)を得ることができるでしょう。不遇な時こそ、真の友情や協力関係が生まれる可能性を示唆しています。

六五(りくご):

章(あきら)かなるを来(きた)す。慶誉(けいよ)有(あ)り。吉(きち)。

原文:來章。有慶譽。吉。

書き下し文:章(しょう)を来(きた)す。慶誉(けいよ)有(あ)り。吉(きち)。

現代語訳:賢明な人物がやって来て、その才能が明らかになる。喜びと名誉がある。吉である。

ポイント解説:
君主の位にあり、柔順中正の徳を備えています。この爻は、賢明で有能な人材(章を来す)を積極的に登用し、その才能を活かすことで、国や組織に大きな喜びと名誉(慶誉有り)がもたらされることを示しています。リーダーが賢く、そして謙虚に他者の才能を受け入れ、活かすことの重要性。それによって、大きな吉(吉)が得られます。

上六(じょうりく):

其(そ)の屋(おく)を豊(ゆた)かにし、其(そ)の家(いえ)を蔀(おお)う。其(そ)の戸(こ)を闚(うかが)うに、阒(げき)として其(そ)れ人(ひと)なし。三歳(さんさい)覿(み)ず。凶(きょう)。**

原文:豐其屋。蔀其家。闚其戶、阒其无人。三歳不覿。凶。

書き下し文:其(そ)の屋(おく)を豊(ほう)にし、其(そ)の家(か)を蔀(おお)う。其(そ)の戸(こ)を闚(うかが)うに、阒(げき)として其(そ)れ人(ひと)なし。三歳(さんさい)にして覿(み)ず。凶(きょう)。

現代語訳:自分の家だけを豊かに飾り立て、外部との交流を閉ざしてしまう。その家の戸口から中を覗いても、ひっそりとして誰もいない。三年もの長い間、誰とも会うことがない。凶である。

ポイント解説:
「豊」の時の極点。豊かさを自分だけのものとして囲い込み(其の屋を豊にし、其の家を蔀う)、他者との交流を断ち、孤立してしまっている姿です。その結果、家の中は静まり返り、誰も訪れる人がいなくなります(闚其戶、阒其无人)。このような孤立と自己満足は、結局は衰退(凶)を招きます。豊かさは、分かち合い、社会に還元してこそ、真の価値を生むという教えです。

【雷火豊(らいかほう)の彖伝】〜全体像〜

原文 彖曰。豐、大也。明以動、故豐。王假之、尚大也。勿憂宜日中、宜照天下也。日中則昃、月盈則食。天地盈虛、與時消息。而況於人乎、況於鬼神乎。

書き下し文 彖(たん)に曰(いわ)く、豐(ほう)は、大(だい)なり。明(めい)にして以(もっ)て動(うご)く、故(ゆえ)に豐(ほう)なり。王(おう)之(これ)に假(いた)るとは、大(だい)を尚(たっと)べばなり。憂(うれ)うること勿(なか)れ日中(にっちゅう)するに宜(よろ)しとは、天下(てんか)を照(て)らすに宜(よろ)しければなり。日(ひ)中(ちゅう)なれば則(すなわち)昃(かたむ)き、月(つき)盈(み)つれば則ち食(か)く。天地(てんち)の盈虛(えいきょ)も、時(とき)と與(とも)に消息(しょうそく)す。而(しか)るを況(いわ)んや人(ひと)に於(おい)てをや、況んや鬼神(きしん)に於てをや。

現代語訳 彖伝は言う。豊とは、盛大であるということだ。(下の離の)明晰な知恵をもって、(上の震の)力強い行動が伴う。だからこそ、豊大なのである。(卦辞に)「王がこの盛大な時に至る」とあるのは、その偉大さを尊ぶからである。「(やがて来る衰えを)憂えることはない、真昼の太陽のようにあるべきだ」とあるのは、その光で天下を遍く照らすのが良いからである。太陽は、真昼に至ればやがて傾き始め、月は、満月になればやがて欠け始める。天地の満ち欠けでさえも、時と共に盛衰を繰り返すのだ。ましてや人間においてをや、人知を超えた鬼神においてをや(この法則から逃れることはできない)。

ポイント解説  「雷火豊」の彖伝は、わたしたちが人生の「頂点」に立った時に、いかにしてその輝きを真に価値あるものとし、そして避けられない変化の波を、いかにして賢明に、そして穏やかに受け入れていくかという、非常に成熟した智慧を授けてくれます。「雷火豊」の時は、わたしたちの人生における輝かしい「収穫の秋」であり、「真昼の時」です。その恵みに深く感謝し、その光を惜しみなく分かち合い、そして必ず訪れる次の季節に備える。その賢明で、大らかな心のあり方こそが、わたしたちの人生を、一過性の成功ではなく、永遠のサイクルの中で豊かに実り続けるための道へと導いてくれるのです。

大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。雷電皆至、豐。君子以折獄致刑。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、雷電(らいでん)皆(みな)至(いた)るは豐(ほう)なり。君子(くんし)以(もっ)て獄(ごく)を折(さだ)め刑(けい)を致(いた)す。

現代語訳:象伝は言う。雷鳴が轟き、稲妻が光り輝き、その威光と明智が共に至るのが豊の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、訴訟を公正に裁き、刑罰を適切に執行する。

ポイント解説:
雷の威力(震)と稲妻の光明(離)が同時に現れる、まさに天の威光と明智が極まった状態が「豊」の象徴です。これを見た君子は、「獄を折め刑を致す」、つまり、訴訟や争い事を公正に裁き、罪ある者には適切な刑罰を科すことによって、社会の秩序と正義を確立することの重要性を学びます。豊かさや力が頂点にある時こそ、その力を用いて社会の不正を正し、公平な判断を下すという、リーダーの厳粛な責任を示しています。

【むすび】

雷火豊の卦は、わたしたちが人生の頂点とも言える「豊かさ」や「成功」を経験する時に、いかにしてその輝きを曇らせることなく、むしろそれをさらなる成長と社会への貢献へと繋げていくかという、深くも壮大な智慧を授けてくれます。

  • 1. 「憂(うれ)うること勿(なか)れ。日中(にっちゅう)するに宜(よろ)し」 – 盛時(せいじ)を恐れず、太陽のように今を輝こう: わたしたちは、成功や幸福が永遠ではないことを知っています。しかし、雷火豊は、その変化を過度に憂えるのではなく、むしろ「今、この瞬間」の豊かさや輝きを、真昼の太陽のように、公明正大に、そして惜しみなく享受し、その光を周囲にも分かち合うことの大切さを教えています。日々良くなるためには、未来への不安に囚われることなく、今この瞬間の豊かさを最大限に生きることでもあるのです。
  • 2. 「獄(ごく)を折(さだ)め刑(けい)を致(いた)す」 – あなたの内なる「正義」と「明確な判断」を: 大象伝が示すように、豊かさや力の頂点にある時は、物事を明らかにし、公正な判断を下す絶好の機会です。わたしたちも、自分自身の心の中にある曖昧さや、解決すべき問題(内なる「獄」)に対して、勇気と明晰さをもって向き合い、時には厳しい決断(刑を致す)を下すことが必要かもしれません。それは、自分自身に対する誠実さの証です。
  • 3. 「孚(まこと)有(あ)りて發(ひら)けば若(も)しくは吉(きち)」 – 困難の中にも、誠実さで希望の光を見出す: 六二の爻が教えるように、たとえ豊かさの中で一時的に視界が遮られたり、疑念が生じたりしても、わたしたちが内なる誠実さ(孚)を失わず、それを勇気をもって明らかにする(發けば)ならば、必ず道は開け、吉へと転じます。わたしたちの道は、常に誠実さを伴侶とすることで、どんな困難も乗り越えていけるのです。
  • 4. 「其(そ)の屋(おく)を豊(ゆた)かにし、其(そ)の家(いえ)を蔀(おお)う」の罠(わな)を避け、豊かさを分かち合おう: 上六の爻が厳しく警告するように、得られた豊かさを自分だけのものとして囲い込み、他者との交流を断ってしまうことは、結局は孤立と衰退を招きます。高尚な精神は、得た恵みを感謝と共に受け取り、そしてそれを惜しみなく周囲と分かち合い、社会全体を豊かにしていくという、美しい循環の中にこそ花開くのです。

雷火豊の時は、わたしたちの人生における、まばゆいばかりの「収穫期」です。その豊かさに感謝し、驕ることなく、そしてその光と力を、自分自身と世界のために賢明に用いる。そのあり方こそが、この素晴らしい時運を、さらに輝かしい未来へと繋げていく、唯一の道となるでしょう。