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老子 道徳経  第十二章「検欲(けんよく)」 

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〜「刺激」を減らすと、人生の感度は劇的に上がる〜

1. 原文(漢文)

五色令人目盲。 五音令人耳聾。 五味令人口爽。

馳騁田獵,令人心發狂。 難得之貨,令人行妨。

是以聖人為腹不為目。 故去彼取此。

2. 書き下し文

五色(ごしき)は人(ひと)の目(め)を盲(もう)にし、 五音(ごおん)は人の耳(みみ)を聾(ろう)にし、 五味(ごみ)は人の口(くち)を爽(たが)う。

馳騁(ちてい)田猟(でんりょう)は、人の心(こころ)をして発狂(はっきょう)せしめ、 難得(なんとく)の貨(か)は、人の行(おこない)を妨(さまた)ぐ。

是(ここ)を以(もっ)て聖人(せいじん)は腹(はら)の為(ため)にして目(め)の為にせず。 故(ゆえ)に彼(か)を去(さ)りて此(これ)を取(と)る。

3. 現代語訳

目がチカチカするような鮮やかな色彩ばかり見ていると、かえって視覚は麻痺し、本来のものが見えなくなります。 耳をつんざくような音楽や雑音ばかり聞いていると、かえって聴覚はおかしくなり、静けさが聞こえなくなります。 濃厚で刺激的な味付けのものばかり食べていると、舌がバカになり、素材本来の繊細な味がわからなくなります。

馬を走らせて獲物を追い回すような(スリルや興奮を求める)娯楽は、人の心を狂わせ、落ち着きを失わせます。 手に入りにくい珍しい宝物を追い求めると、人は正しい行いを踏み外し、身を持ち崩してしまいます。

だからこそ、理想的な人物(聖人)は、 外見的な刺激や欲望(目)を満たすことよりも、内面的な充実や生命の維持(腹)を満たすことを大切にします。 刺激的な外の世界(彼)を捨てて、内なる平穏な世界(此)を選ぶのです。

4. 「ポイント解説

第十二章は、現代人が陥りやすい「もっともっと病」から脱出し、自分本来のパフォーマンスを取り戻すための「感覚デトックス(解毒)」の教えです。

誰にとっても共通する、人生の感度を高める3つの習慣は以下の通りです。

① 「情報の断食」をする(デジタル・デトックス)

「五色は人の目を盲にす」。現代で言えば、終わりのないSNSのタイムライン、ショート動画、派手な広告です。 これらを常に見続けていると、脳が情報の洪水を処理しきれず、本当に見るべきもの(自分の現状、家族の表情、季節の変化)が見えなくなります。

「日々新たに、益々よくなる」ためには、引き算が必要です。 「今日はスマホを見ない時間を1時間作る」。 あえて刺激を遮断することで、脳の「盲目状態」が治り、直感やひらめきが降りてくるようになります。

② スリル中毒から抜け出す

「馳騁田猟(狩り)」は、現代におけるギャンブル、衝動買い、あるいはいいね数を気にする承認欲求ゲームに当たります。 これらは脳内でドーパミン(興奮物質)を出しますが、老子はそれを「心を発狂させる」と警告します。興奮は一時的で、切れると以前より深い虚無感が襲ってくるからです。

興奮(Excitement)ではなく、平穏(Peace)を選ぶこと。 ドキドキすることよりも、ホッとすることを優先してください。その穏やかな土台の上にこそ、持続可能な成功が築かれます。

③ 「目」ではなく「腹」を満たす

ここが最大のポイントです。「為腹不為目(腹のためにして目のためにせず)」。

  • 目の欲求: 他人からどう見られるか、見栄えが良いか、刺激的か。(表層的でキリがない)
  • 腹の欲求: 自分が心地よいか、健康的か、魂が満たされるか。(本質的で満ち足りる)

人生で選択に迷ったら、自分に聞いてください。 「これは誰かに見せるためのもの(目)か? それとも自分の魂を養うもの(腹)か?」 見栄(目)を捨てて、実質(腹)を取る。 この基準を持つだけで、無駄な出費や労力が消え、あなたのエネルギーは「本当にあなたを良くするもの」だけに注がれるようになります。