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【易経】第35卦「火地晋(かちしん)」– 太陽昇り万物照らす、徳を輝かせ進み行く時

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【易経】第35卦「火地晋(かちしん)」– 太陽昇り万物照らす、徳を輝かせ進み行く時

1. 卦象(かしょう):

 

2. 名称(めいしょう): 火地晋(かちしん)

3. 【この卦のメッセージ】
上卦(じょうか):離(り) – 火、麗(つく)、明知、太陽、文明 *
下卦(かか):坤(こん) – 地、受容、柔順、母性、大衆 *
全体のイメージ: 広大な大地(坤)の上に、明るく輝く太陽(離の火)が昇り、その光で万物を遍く照らし出している。この「火地晋」の姿は、まさに暗闇が去り、光明が訪れ、物事が順調に進展し、発展していく様を力強く象徴しています。「晋」という文字は、「進む」「昇る」という意味を持ち、ここでは徳のある君主や指導者が、民衆の支持を得て、その賢明な統治によって国や社会を明るく照らし、繁栄へと導いていく、輝かしい進撃の時を表します。 大地は太陽の光と熱を豊かに受け止め、それによって万物を育みます。同様に、人々もまた、賢明で徳のあるリーダーの導きによって、その才能を開花させ、安心して生活を営むことができるのです。そこには、上下の調和と、共に進み栄えるという、美しい理想の姿が描かれています。

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卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):晉。康侯用錫馬蕃庶。晝日三接。

書き下し文: 晉(しん)は康侯(こうこう)馬(うま)を錫(たま)うこと蕃庶(はんしょ)し。晝日(ちゅうじつ)に三(み)たび接(まじわ)る。

現代語訳:晋(進み出る時)は、人々を安らかにする徳のある諸侯(康侯)が、天子から多くの馬を賜り、一日に三度も引見されるほど、その功績が認められ、寵愛を受ける。

ポイント解説:
この卦辞は、「晋」の時が、徳のあるリーダー(康侯)の功績が認められ、大きな名誉と信頼を得て、物事が非常に順調に進展する大吉の時であることを示しています。「多くの馬を賜る」とは、大きな力や資源、そして栄誉が与えられることの象徴です。「一日に三度も引見される」とは、その能力と忠誠心が高く評価され、頻繁に重要な相談を受けたり、寵愛を受けたりする様を表します。まさに、これまでの努力が報われ、大きく飛躍できるチャンスの到来です。

爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初六(しょりく):

晉(すす)むこと摧(くだ)かるが如(ごと)し。貞(てい)なれば吉(きち)。孚(まこと)に罔(な)きも裕(ゆる)らかなれば咎(とが)なし。

原文:晉如摧如。貞吉。罔孚裕无咎。

書き下し文:晉(しん)如(じょ)たり摧如(さいじょ)たり。貞(てい)なれば吉(きち)。孚(ふ)に罔(な)きも裕(ゆう)なれば咎(とが)なし。

現代語訳:進もうとするが、妨げられて挫(くじ)けそうになる。しかし、正しい道を守れば吉である。たとえ周囲からの信頼がまだ十分に得られていなくても、心にゆとりを持って対処すれば咎めはない。

ポイント解説:
「晋」の始まり。まだ力も弱く、進もうとしても障害に阻まれ(摧かるが如し)、意気消沈しやすい時です。しかし、このような時でも、正しい道(貞)を固く守り、焦らず、そして心にゆとり(裕らかなれば)を持って事にあたれば、大きな咎めはありません。周囲の信頼(孚)がまだ薄くても、腐らずに誠実さを貫くことが、やがて道を開く鍵となります。

六二(りくじ):

晉(すす)むこと愁(うれ)うるが如(ごと)し。貞(てい)なれば吉(きち)。其(そ)の王母(おうぼ)より茲(こ)の介福(かいふく)を受(う)く。

原文:晉如愁如。貞吉。受茲介福于其王母。

書き下し文:晉(しん)如(じょ)たり愁如(しゅうじょ)たり。貞(てい)なれば吉(きち)。其(そ)の王母(おうぼ)より茲(こ)の介福(かいふく)を受(う)く。

現代語訳:進もうとするが、思うようにいかず憂いが多い。しかし、正しい道を守れば吉である。やがて、(慈愛深い)王母(先祖の霊や、徳のある目上の女性)から、この大きな福助けを受けるだろう。

ポイント解説:
初六と同様に進展が難しく、憂いや悩み(愁うるが如し)が多い時です。しかし、ここでも正しい道(貞)を守り続けることが強調されます。そうすれば、やがて予期せぬところから、まるで母のような慈愛に満ちた大きな助け(介福)が得られると示唆しています。困難な時でも、誠実さを失わず、徳を積んでいれば、必ずや支援の手が差し伸べられるのです。

六三(りくさん):

衆(みな)允(ゆる)す。悔(くい)亡(ほろ)ぶ。

原文:眾允。悔亡。

書き下し文:衆(しゅう)允(ゆる)す。悔(くい)亡(ほろ)ぶ。

現代語訳:多くの人々が信頼し、許し認める。後悔は消え去る。

ポイント解説:
下の三つの陰爻が、上の九四の陽爻(明君の象徴)と正しく応じ、心から信頼し従っている状態です。多くの人々(衆)が、指導者の徳を認め、心から許し受け入れている(允す)ため、これまでの悩みや後悔(悔)も自然と消え去ります。上下の信頼関係がしっかりと結ばれ、物事がスムーズに進み始める、喜ばしい時です。

九四(きゅうし):

晉(すす)むこと鼫鼠(せきそ)の如(ごと)し。貞(てい)なれども厲(あやう)し。

原文:晉如鼫鼠。貞厲。

書き下し文:晉(しん)如(じょ)たること鼫鼠(せきそ)の如(ごと)し。貞(てい)なりと雖(いえど)も厲(あやう)し。

現代語訳:進み方が、まるでコソコソと動き回る大きなネズミのようだ。正しい道を守っていても、危うさが伴う。

ポイント解説:
この爻は陽爻ですが陰位にあり、大臣の立場でありながら、どこか落ち着かない、コソコソとした(鼫鼠の如し)進み方をしていることを示します。そのやり方は正しくなく、たとえ正しい目的(貞)を持っていても、その手法や態度のために、周囲からの疑念や反発を招き、危険(厲し)が伴います。公明正大さを欠いた行動は、たとえ善意からであっても、結局は自分自身を危うくすることを警告しています。

六五(りくご):

悔(くい)亡(ほろ)ぶ。失得(しっとく)恤(うれ)うること勿(なか)れ。往(ゆ)けば吉(きち)、利(よろ)しからざるなし。

原文:悔亡。失得勿恤。往吉、无不利。

書き下し文:悔(くい)亡(ほろ)ぶ。失得(しっとく)恤(うれ)うること勿(なか)れ。往(ゆ)けば吉(きち)、利(よろ)しからざるなし。

現代語訳:後悔は消え去る。失うことや得ることに一喜一憂してはならない。進んでいけば吉であり、何事においても不利益なことはない。

ポイント解説:
君主の位にあり、柔順中正の徳を備え、下の賢明な臣下(九四など)に任せて事を進めているため、もはや後悔することはありません(悔亡ぶ)。目先の小さな損得(失得)に心を囚われることなく(恤うること勿れ)、大局的な視点に立ち、自信を持って前進すれば(往けば吉)、あらゆる面で良い結果(利しからざるなし)が得られる、非常に幸運な時です。大らかな心と、信頼に基づいた委任が鍵となります。

上九(じょうきゅう):

其(そ)の角(つの)に晉(すす)む。維(た)だ邑(ゆう)を伐(う)つに用(もち)う。厲(あやう)うけれども吉(きち)にして咎(とが)なし。貞(てい)なれども吝(りん)。

原文:晉其角。維用伐邑。厲吉无咎。貞吝。

書き下し文:其(そ)の角(かく)に晉(すす)む。維(た)だ邑(ゆう)を伐(う)つに用(もち)う。厲(あやう)うけれども吉(きち)にして咎(とが)なし。貞(てい)なりと雖(いえど)も吝(りん)。

現代語訳:角を突き出すように、強引に進む。それは、自分の町(内部の不正)を正すためにのみ用いるべきである。そうすれば、危うさはあっても吉であり、咎めはない。しかし、その強引さをどこまでも押し通そうとすれば、困難や後悔が伴う。

ポイント解説:
「晋」の時の最終段階。力が極まり、角を突き出すように、やや強引に進もうとする傾向があります。この力は、外敵を攻撃するためではなく、あくまで自分自身の内部(邑を伐つ)の不正や問題を正すためにのみ用いるべきです。そうすれば、多少の危うさ(厲うけれども)はあっても、結果的に吉となり、咎めもありません。しかし、その強引なやり方を、外部に対してまで、あるいはいつまでも固執し続ける(貞なりと雖も)ならば、必ずや困難や後悔(吝)を招くでしょう。力の使い方と、その限界をわきまえることの重要性を示しています。

大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。明出地上、晉。君子以自昭明德。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、明(めい)地(ち)の上(うえ)に出(い)づるは晉(しん)なり。君子(くんし)以(もっ)て自(みずか)ら明德(めいとく)を昭(あきら)かにす。

現代語訳:象伝は言う。太陽(明)が地平線から昇り、地上を照らし出すのが晋の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、自分自身の内なる明るい徳を、ますます明らかにして輝かせる。

ポイント解説:
太陽が地上に昇り、その光で万物を照らし出すように、全てが明らかになり、進展していくのが「晋」の象徴です。これを見た君子は、「自ら明德を昭かにす」、つまり、自分自身の内にある素晴らしい徳性(明德)を、隠すことなく、ますます磨き輝かせ、その光で周囲を照らし、人々を導いていくことの重要性を学びます。内なる善や知恵を、積極的に外に現していくこと。それが、この進展の時における、最も美しいあり方なのです。

【むすび】

火地晋の卦は、わたしたちが人生において、どのようにして前進し、発展し、そしてその過程で内なる徳を輝かせていくかという、希望に満ちた智慧を授けてくれます。

  • 1. 「自(みずか)ら明德(めいとく)を昭(あきら)かにす」 – あなたの内に眠る「光」を、今こそ解き放とう: わたしたち一人ひとりの中には、必ず素晴らしい「明るい徳(明德)」――それは、優しさかもしれませんし、知性、勇気、創造力、あるいは誰かを思う誠実な心かもしれません――が眠っています。火地晋の時は、その内なる光を恐れることなく、自信を持って外に現し、輝かせる時です。あなたのその輝きが、あなた自身の道を照らし、そして周りの人々にも希望と勇気を与える、美しい光となるでしょう。
  • 4. 「失得(しっとく)恤(うれ)うること勿(なか)れ」 – 小さな損得に囚われず、大局的な成長を見つめよう: 六五の爻が教えるように、前進の過程では、時に小さな損失や、思うようにいかないこともあるかもしれません。しかし、そのような目先の損得に一喜一憂せず、常に大きな目標、すなわち自分自身の「明德」を輝かせるという大局的な視点を持ち続けることが大切です。その確固たる姿勢が、最終的な大きな吉運へと繋がっていくのです。

火地晋の時は、わたしたちの努力が報われ、才能が開花し、そして周囲からの信頼と協力を得て、力強く未来へと進んでいく、まさに「太陽が昇る」ような輝かしい時です。この素晴らしい機会を最大限に活かし、自分自身の内なる光を磨き、それを惜しみなく周囲と分かち合うことで、わたしたちの人生は、そしてわたしたちの世界は、より明るく、より豊かで、そしてより喜びに満ちたものへと成長していくことでしょう。

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