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【八卦の詳解】「坤(こん)」– 母なる大地の受容力、全てを受け入れ育み、実らせる

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【八卦の詳解】「坤(こん)」– 母なる大地の受容力、全てを受け入れ育み、実らせる

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 坤(こん)

【坤】– 全てを生かす大地、無限の包容力

卦象と象徴:

三本の途切れた陰の爻(- -)が重なった姿。これは、陽の剛健さとは対照的に、柔順で、全てを受け入れるための「空間」や「器」を象徴しています。純粋で混じり気のない、どこまでも続く陰のエネルギーです。

自然界の象徴

地(大地)

性質

柔順(じゅうじゅん:しなやかに従う)、受容、包容、養育、静か、厚、堅実、営み、虚、遅れ、疑い、吝、卑しさ

人物における象徴

皇后、母、妻、老婦、小人、罪人、農夫、陰謀家

動物における象徴

牛(特に、従順で勤勉な牝牛)、牝馬、虎、猫科

物質における象徴

布、袋、蔵、倉庫、衣装、村落、田畑、章、新聞、書籍、書物

物価

天を高値とし、地を卑(低)いとし、低迷状態、底値をつく、下落などの兆し

病気

脾臓や胃腸、消化器系を指す 下痢や下血、伝染病や過労、精力減退

 

その他

天候 おおむね曇り、しとしとと降る冴えない雨でもある 大雨の場合は陰極まり陽に転ずる晴れの兆し

季節 晩夏から初秋

方位 先天図は北 後天図は南西

数 易数8 五行数5、10

時間 午後1時〜5時まで 未申の刻

色 黒または黄色

味 甘味

 

坤の物語


「坤」とは、天からの光も雨も、清流も濁流も、善い種もそうでない種も、選り好みすることなく、その全てを静かに受け入れる、広大無辺な大地そのものです。それは、あらゆる生命の種をその温かい懐(ふところ)に抱き、静かに、しかし絶え間なく養分を送り続け、やがて豊かな実りへと導く、無限の「受容力」と「養育力」を象徴します。 わたしたちの心における「坤」は、他者の意見や、時に厳しい現実を、まずは感情的に反発せず、静かに受け止める強さです。そして、すぐに結果を求めず、じっくりと物事が熟すのを待つ、深い忍耐力であり、あらゆる存在を育み、支えようとする、無償の愛情でもあるのです。

「厚德載物(こうとくさいぶつ)」の精神 – 厚き徳で、万物をその背に載せる

「坤」のエネルギーが二つ重なると、易経六十四卦の第二卦「坤為地(こんいち)」となります。その卦の性質を説明する大象伝(たいしょうでん)には、「坤」の徳の本質を見事に表現した、**「厚德載物(こうとくさいぶつ)」**という言葉があります。

「象(しょう)に曰(いわ)く、地勢(ちせい)は坤(こん)なり。君子(くんし)以(もっ)て厚德(こうとく)もて物(もの)を載(の)す。」 (象伝は言う。大地のあり方は、全てを受け入れ育む坤の徳そのものである。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、厚い徳をもって万物を受け止め、包容する。)

「厚德」とは、文字通り「厚い徳」、つまり、広くて深い、慈愛に満ちた人間性を意味します。「載物」とは、「物を載せる」、すなわち、あらゆる人々や出来事を、その背に載せ、支え続けるということです。 大地が、高い山も低い谷も、清らかな森も荒れた土地も、善人も悪人も、その全てを分け隔てなく、文句一つ言わずに支え続けているように、わたしたちもまた、「厚き徳」をもって、目の前の人や出来事を、まずはありのままに受け止め、包容することが大切である、と「坤」の智慧は教えています。この揺るぎない「受容力」と「包容力」こそが、真の強さの証であり、全ての創造の土台となるのです。

【わたしたちと「坤」の力】– 母なる大地のように、豊かさを育む3つのヒント

では、わたしたちがこの広大で、静かで、しかし何よりも力強い「坤」のエネルギーを、日々の「益々善成」のために、どのように活していけば良いのでしょうか。

  • ヒント1:まず「受け入れる」ことから始める – 深い「聴く力」を育む わたしたちは、他者の意見や、思い通りにならない現実に直面した時、ついすぐに「でも」「しかし」「それは違う」と、心の中で反論したり、拒絶したりしがちです。しかし、「坤」の智慧は、まず大地のように、静かに、そして深く、その全てを一旦「受け入れてみる」ことを促します。それは、相手の言葉を最後まで遮らずに聴くことであり、目の前の出来事を良い悪いで判断する前に、ただ「そうである」と認識することです。その受容という名の「心のスペース」の中でこそ、新しい理解や解決策、そして真の調和が芽生えるのです。
  • ヒント2:焦らず、じっくりと「時が熟す」のを待つ – 忍耐という名の養育力 「坤」は、母なる大地が種を育むように、忍耐強い養育の力を象徴します。わたしたちが何か新しいことを始めたり、目標という名の種を蒔いたりした時、すぐに結果を求め、焦ってしまうことはありませんか? 大地は、種に無理強いをせず、太陽と雨の恵みを受けながら、静かに、そして着実に、芽吹き、育ち、そして実る「時」を待ちます。わたしたちの「益々善成」の旅もまた、この「待つ力」「育む力」を持つことで、より確かで、より豊かな実りを得ることができるでしょう。
  • ヒント3:「縁の下の力持ち」の喜びと尊さを知る 「坤」の力は、「乾」のような華々しいリーダーシップとは異なり、目立たず、しかし不可欠な「支える力」です。わたしたちが誰かの夢や挑戦を、大地のように黙々と支える時、あるいは組織や家庭の中で、目立たないながらも全体の調和のために尽くす時、そこには華やかな喝采はないかもしれません。しかし、他者が輝くのを助け、共同体を育み、全体の土台を支えているという、何にも代えがたい深い喜びと、静かな誇りがあります。それもまた、人間として最も尊い「益々善成」の形の一つなのです。

【むすび】大地に深く根ざし、天の光を受け取る – わたしたちの内に、坤の豊かさを

「坤」の智慧は、わたしたちに、力強く前に進むことだけが成長ではないことを教えてくれます。受け入れ、育み、支え、そして待つ。その静かで、しなやかで、そして強靭な「坤」の力があってこそ、天から降り注ぐ「乾」の創造の光は、この地上で美しい花を咲かせ、豊かな果実を結ぶことができるのです。

わたしたちの内なる世界もまた、同じです。行動や主張(乾)だけでなく、静かに耳を傾け、受け入れる(坤)心のバランスが取れた時、わたしたちの人生は、揺るぎない安定感と、真の豊かさ、そして穏やかな感謝の気持ちで、満たされていくことでしょう。

さあ、わたしたちも、心の中に広がる母なる大地を感じてみませんか。 その無限の受容力と養育力に深く根ざす時、わたしたちの「日々新たに、益々よくなる」旅は、より一層、確かで、そして豊かなものへと変わっていくのですから。