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【易経】第34卦「雷天大壮(らいてんたいそう)」– 大いなる力の奔流を、正義と礼節で導き成す

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【易経】第34卦「雷天大壮(らいてんたいそう)」– 大いなる力の奔流を、正義と礼節で導き成す

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 雷天大壮(らいてんたいそう)

3.【この卦のメッセージ】 
上卦(じょうか):震(しん) – 雷、動く、奮い立つ、長男
下卦(かか):乾(けん) – 天、創造、剛健、父性
全体のイメージ: 下にある力強く創造的な天(乾)のエネルギーが、その上に位置する雷(震)の激しい動きと共鳴し、天に向かって轟き渡る。この「雷天大壮」の姿は、まるで春の雷が天の広大なエネルギーを得て、その威力を最大限に発揮しているかのように、あるいは、若い牡羊が角を突き立てて勇み立つように、圧倒的な力と勢いが頂点に達している状態を象徴しています。「大壮」とは、文字通り「大いに壮(さか)ん」であり、エネルギー、活力、そして自信が満ち溢れている時を示します。 四つの陽爻が下から力強く昇り、陰の力を圧倒している形でもあり、物事が非常に勢いよく、そして積極的に進展していく様を表しています。しかし、この強大な力は、一歩間違えれば暴走し、破壊的なものにもなりかねない危険性も孕んでいます。

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卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):大壯。利貞。

書き下し文:大壯(たいそう)は貞(ただ)しきに利(よろ)し。

現代語訳:大壮(大いに盛んな時)は、正しい道を守ることが大切である。

ポイント解説:この卦辞は非常に簡潔ですが、極めて重要なメッセージを伝えています。「大壮」という、力が頂点に達している時には、何よりも「貞(ただしきに利し)」、つまり、その強大な力を正しい道徳や目的に沿って用いること、そしてその姿勢を貫き通すことが最も重要であると説いています。力が盛んであればあるほど、その使い方を誤れば大きな過ちを犯しやすく、また周囲との摩擦も生じやすくなります。だからこそ、常に「正しさ」を心の中心に据え、自らを律することが、この時期の幸運を確かなものにするための絶対条件なのです。

爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初九(しょきゅう):

趾(あし)に壮(さかん)なり。征(ゆ)けば凶(きょう)。孚(まこと)有(あ)り。

原文:壯于趾。征凶。有孚。

書き下し文:趾(し)に壮(そう)なり。征(ゆ)けば凶(きょう)。孚(ふ)有(あ)り。

現代語訳:力が足先だけにみなぎっている。この状態で進んでいけば凶である。ただし、内には誠実さがある(と信じるべきである)。

ポイント解説:
「大壮」の始まり。まだ力が足先(趾)という末端に集中しているだけで、全体のバランスが取れていません。この状態で、勢いだけで進もうとすれば(征けば)、必ず失敗し凶となります。しかし、「孚有り」とは、内には誠実な心や可能性があることを示唆しています。焦らず、力を養い、時を待つことの重要性を示しています。

九二(きゅうじ):

貞(てい)にして吉(きち)。

原文:貞吉。

書き下し文:貞(てい)にして吉(きち)。

現代語訳:正しい道を守れば吉である。

ポイント解説:
九二は内卦の中心で中庸の徳を備えています。この爻は、力が盛んな時であっても、常に正しい道(貞)を固く守り続けることで、吉運が得られることをシンプルに示しています。卦辞の「貞しきに利し」を具体的に体現するあり方です。勢いに任せるのではなく、常に正しさを見失わないことが大切です。

九三(きゅうさん):

小人(しょうじん)は壮(そう)を用(もち)い、君子(くんし)は罔(もう)を用(もち)う。貞(てい)なれども厲(あやう)し。羝羊(ていよう)藩(まがき)に触(ふ)れて、其(そ)の角(つの)を羸(くるし)む。

原文:小人用壯、君子用罔。貞厲。羝羊觸藩、羸其角。

書き下し文:小人(しょうじん)は壮(そう)を用(もち)い、君子(くんし)は罔(もう)を用(もち)う。貞(てい)なりと雖(いえど)も厲(あやう)し。羝羊(ていよう)藩(はん)に触(ふ)れて、其(そ)の角(かく)を羸(くる)しむ。

現代語訳:徳の低い小人物は力をむやみに使おうとし、君子(徳の高い人)は力を用いない(あるいは、慎重に用いる)。正しい道を守っていても危うさが伴う。それは、牡羊がむやみに生垣に突進し、その角を痛めてしまうようなものである。

ポイント解説:
この爻は、力の使い方について、小人と君子を対比させて警告しています。小人は力を誇示し、むやみに使おうとしますが(壮を用い)、君子はむしろ力を用いない(罔を用う)、あるいは極めて慎重に用います。この時期は、正しい道を守っていても(貞なりと雖も)、過剰な力ゆえに危険(厲し)が伴いやすいのです。「羝羊藩に触る」とは、血気にはやる牡羊が、無謀にも生垣に突進し、角を痛めて動けなくなる様子の比喩。力の過信や、状況を顧みない強引な行動は、自らを窮地に追い込むことを教えています。

九四(きゅうし):

貞(てい)なれば吉(きち)にして悔(くい)亡(ほろ)ぶ。藩(まがき)決して羸(くるし)まず。大輿(たいよ)の輹(とこしばり)に壮(さかん)なり。

原文:貞吉悔亡。藩決不羸。壯于大輿之輹。

書き下し文:貞(てい)なれば吉(きち)にして悔(くい)亡(ほろ)ぶ。藩(はん)決(きま)りて羸(くる)しまず。大輿(たいよ)の輹(ふく)に壮(そう)なり。

現代語訳:正しい道を守れば吉であり、後悔も消え去る。行く手を阻んでいた生垣も決壊し、もはや苦しむことはない。まるで大きな車の頑丈な車軸のように、その力は盛んである。

ポイント解説:
九三の危機を乗り越え、正しい道(貞)を貫いた結果、大きな吉運(吉にして悔亡ぶ)が開ける時です。これまでの障害(藩)も取り除かれ(決りて)、もはや進むことを妨げるものはありません。その力は、大きな車を支える頑丈な車軸(大輿の輹)のように、非常に強く安定しており、大きな事業を成し遂げるに足るものです。正義と忍耐が、ついに実を結ぶ時です。

六五(りくご):

羊(ひつじ)を易(えき)に喪(うしな)う。悔(くい)なし。

原文:喪羊于易。无悔。

書き下し文:羊(ひつじ)を易(い)に喪(うしな)う。悔(くい)なし。

現代語訳:羊をたやすく失ってしまう(あるいは、辺境の地で失う)。しかし、後悔することはない。

ポイント解説:
この卦の君主の位にあります。力が盛んな陽爻たちに囲まれ、柔順な性質ゆえに、何かを失う(羊を喪う)ことがあるかもしれません。「易」は、たやすい、あるいは辺境の地を意味し、油断や不注意から損失を招く、あるいは、大局のためには小さな犠牲もやむを得ない、と解釈できます。しかし、その損失が根本的なものではなく、また、より大きな目的のためであれば、後悔する必要はない(悔なし)とされています。執着を手放すことの重要性を示唆しています。

上六(じょうりく):

羝羊(ていよう)藩(まがき)に触(ふ)る。退(しりぞ)くこと能(あた)わず、遂(と)ぐること能(あた)わず。利(よろ)しき攸(ところ)なし。艱(くるし)めば則(すなわち)吉(きち)。**

原文:羝羊觸藩。不能退、不能遂。无攸利。艱則吉。

書き下し文:羝羊(ていよう)藩(はん)に触(ふ)る。退(しりぞ)くこと能(あた)わず、遂(と)ぐること能(あた)わず。利(よろ)しき攸(ところ)なし。艱(くるし)めば則(すなわち)吉(きち)。

現代語訳:牡羊が生垣に突進し、角が絡まってしまう。退くこともできず、進むこともできない。何の利益もない。しかし、この困難な状況を耐え忍び、苦労すれば、やがては吉となる。

ポイント解説:
「大壮」の力の勢いが極まり、行き過ぎてしまった結果、九三と同様に、牡羊が生垣に角を絡めて身動きが取れない(退くこと能わず、遂ぐること能わず)という、進退窮まった状況です。このような時は、もはや何の利益もありません(利しき攸なし)。しかし、ここで絶望せず、この困難な状況(艱めば)を真摯に受け止め、反省し、耐え忍ぶならば、やがては状況が好転し、吉(吉)を得る道が開かれる、という一縷の希望が示されています。行き過ぎた力の末路と、そこからの再生の可能性を示唆しています。

大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。雷在天上、大壯。君子以非禮弗履。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、雷(らい)天(てん)の上(うえ)に在(あ)るは 大壯(たいそう)なり。君子(くんし)以(もっ)て禮(れい)に非(あら)ざれば履(ふ)まず。

現代語訳:象伝は言う。雷が天空高くにあって轟き渡っているのが大壮の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、礼儀にかなわないことは決して行わない。

ポイント解説:
天高く轟く雷鳴は、まさに「大壮」の盛大なパワーを象徴しています。これを見た君子は、その強大な力を持つ時こそ、決して驕り高ぶることなく、またその力を濫用することなく、「禮に非ざれば履まず」、つまり、人として踏み行うべき正しい道、礼儀や節度から外れたことは、断じて行わない、という厳格な自己規律を身につけます。強大な力は、必ず高い道徳性と礼節によって制御されなければならない、という非常に重要な教えです。

【むすび】

雷天大壮の卦は、わたしたちが人生でエネルギーに満ち溢れ、大きな力を手にした時に、その力をいかにして正しく、そして賢明に用いるべきかという、力強くも深い戒めに満ちた智慧を授けてくれます。

  • 1. あなたの「大壮」の時はいつですか? – 内なる力の高まりを感じ、それを善き方向へ: わたしたちの人生にも、気力、体力、知力、あるいはチャンスといったものが、まるで雷のように力強く湧き上がってくる「大壮」の時期があります。まずは、その内なる力の高まりに気づき、それを喜びと共に受け止めましょう。そして、その素晴らしいエネルギーを、自分自身の成長のため、そして何よりも周囲の人々や社会全体の「ために、意識して用いていくことが大切です。

雷天大壮の時は、わたしたちの内なるエネルギーが最高潮に達し、大きな事を成し遂げる絶好の機会です。しかし、その強大な力を、常に「正しさ」と「礼節」をもって導き、決して驕ることなく、そして周囲との調和を大切にすることで初めて、その力は真に建設的なものとなり、わたしたち自身と世界を、素晴らしい未来へと導いてくれるでしょう。

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