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【易経】 第46卦「地風升(ちふうしょう)」– 小を積みて高大を成す、徳に順い天に昇る道

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【易経】 第46卦「地風升(ちふうしょう)」– 小を積みて高大を成す、徳に順い天に昇る道

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 地風升(ちふうしょう)

3. 【この卦のメッセージ】
上卦(じょうか):坤(こん) – 地、受容、柔順、母性、大衆 *
下卦(かか):巽(そん) – 風、木、入る、従順、長女、草木 *
全体のイメージ:広大な大地(坤)の中に、柔順な風・木(巽)がその根を張り、そこから芽を出し、上へ上へと成長していく。この「地風升」の姿は、まさに大地にしっかりと根差した草木が、風の助けも得ながら、太陽の光を求めて天へと向かって、少しずつ、しかし着実に伸びていく様を象徴しています。「升」という文字は、升(ます)で穀物を計り、それが次第に満ちていく様子、あるいは、下から上へと昇っていくことを意味します。 これは、わたしたちの努力や徳の積み重ねが、すぐには目に見えなくとも、内側で着実に力を蓄え、やがては大きな成長や成功、そして高い地位や尊敬へと繋がっていく、希望に満ちたプロセスを描いています。無理な力技ではなく、自然の理に従った、穏やかで持続的な発展の時です。

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卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文): 升。元亨。用見大人。勿恤。南征吉。

書き下し文:升(しょう)は元(おおい)に亨(とお)る。大人(たいじん)を見(み)るに用(もち)う。恤(うれ)うること勿(なか)れ。南征(なんせい)すれば吉(きち)。

現代語訳:升(昇り進む時)は、願いは根本から大きく通り、成就する。徳の高い優れた人物(大人)に会い、その指導を仰ぐのが良い。心配することはない。南(明るい方向、陽の気盛んな方)へ進んでいけば吉である。

ポイント解説:
この卦辞は、「升」の時が、大きな成功と発展(元亨)をもたらす非常に吉兆な時であることを告げています。「大人を見るに用う」とは、このような成長期には、優れた指導者やメンター(大人)の助言や導きを積極的に求めることが、さらなる飛躍に繋がることを意味します。「恤うること勿れ」とは、将来に対する過度な心配や不安は不要であり、自信を持って進むべきであることを励ましています。そして「南征すれば吉」とは、南が光明や夏の成長を象徴することから、明るく前向きな目標に向かって積極的に行動することが、良い結果をもたらすことを示唆しています。

爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初六(しょりく):

允(まこと)に升(のぼ)る。大吉(だいきち)。

原文:允升。大吉。

書き下し文:允(ゆる)されて升(のぼ)る。大吉(だいきち)。

現代語訳:周囲に信頼され、許されて昇進する。非常に素晴らしい吉である。

ポイント解説:
「升」の始まり。この爻は柔順な性質を持ち、上の陽爻(九二、九三)に素直に従い、引き立てられることで、スムーズに昇進していく様を示しています。自分から積極的に前に出るのではなく、周囲からの信頼と支持を得て、自然な形で引き上げられる。これは、この上ない吉(大吉)であり、謙虚さと協調性がもたらす幸運です。

九二(きゅうじ):

孚(まこと)有(あ)らば乃(すなわち)禴(やく)を用(もち)うるに利(よろ)し。咎(とが)なし。

原文:孚乃利用禴。无咎。

書き下し文:孚(ふ)あらば乃(すなわち)禴(やく)を用(もち)うるに利(よろ)し。咎(とが)なし。

現代語訳:真心があれば、簡素な夏の祭祀(禴)のような小さな真心の捧げものでも、十分に神意に通じ、良い結果が得られる。咎めはない。

ポイント解説:
九二は剛健中正の徳を備えていますが、まだ地位は高くありません。このような時、大切なのは真心(孚)です。たとえ物質的に豊かでなく、立派な捧げものができなくても(禴を用うる)、心からの誠意をもって事にあたれば、それは必ず天に通じ、良い結果をもたらし、咎めもありません。 sincerity の力が状況を好転させることを教えています。

九三(きゅうさん):

虚邑(きょゆう)に升(のぼ)る。

原文:升虚邑。

書き下し文:虚邑(きょゆう)に升(のぼ)る。

現代語訳:誰もいない虚(むな)しい町(地位)に、何の障害もなく昇進する。

ポイント解説:
この爻は、何の抵抗もなく、やすやすと高い地位(虚邑)に昇進していく様を示しています。「虚邑」とは、主のいない町、あるいは実権のない名ばかりの地位とも解釈できます。障害がないためにスムーズに昇進できますが、そこに真の充実感や実質的な権限があるかは疑問です。油断せず、その地位にふさわしい実力を養う努力が必要です。

六四(りくし):

王(おう)用(もっ)て岐山(きざん)に亨(きょう)す。吉(きち)にして咎(とが)なし。

原文:王用亨于岐山。吉无咎。

書き下し文:王(おう)用(もっ)て岐山(きざん)に亨(きょう)す。吉(きち)にして咎(とが)なし。

現代語訳:王が(周の文王がそうしたように)岐山で祭祀を行い、その徳が天下に通じる。吉であり、咎めはない。

ポイント解説:
六四は大臣の位にあり、上の柔順な君主(六五)を誠実に補佐し、その徳をもって政治を行っています。「岐山に亨す」とは、周の文王が岐山で善政を行い、天下の諸侯がその徳にひかれて集まってきた故事を指します。このように、徳に基づいた正しい政治や指導は、必ずや人々からの支持を得て、大きな吉(吉にして咎なし)をもたらします。誠実な奉仕の精神が鍵です。

六五(りくご):

貞(てい)にして吉(きち)。階(きざはし)を升(のぼ)る。

原文:貞吉。升階。

書き下し文:貞(てい)にして吉(きち)。階(かい)を升(のぼ)る。

現代語訳:正しい道を守れば吉である。一歩一歩、階段を昇るように着実に昇進していく。

ポイント解説:
君主の位にあり、柔順中正の徳を備えています。この爻は、正しい道(貞)を固く守り続けることで、吉(吉)を得て、まるで階段を一歩一歩確実に昇るように(階を升る)、着実に地位や名声が高まっていくことを示しています。焦らず、急がず、正しい道を堅実に歩むことの重要性と、その結果として得られる確かな成長を表しています。

上六(じょうりく):

冥升(めいしょう)。息(やす)まざるの貞(てい)に利(よろ)し。

原文:冥升。利于不息之貞。

書き下し文:冥升(めいしょう)す。息(や)まざるの貞(てい)に利(よろ)し。

現代語訳:暗い中で(人知れず)昇り続ける。休むことなく正しい努力を続けることが大切である。

ポイント解説:
「升」の時の最終段階。もはや目に見える形での華々しい昇進ではなく、人知れず、あるいは無意識のうちに、内面的な成長や徳が深まり続けている(冥升)状態です。このような時には、派手な成果を求めるのではなく、ただひたすらに、休むことなく正しい努力(息まざるの貞)を続けることが、さらなる精神的な高みへと繋がる道であることを示しています。見えないところでの地道な努力の尊さです。

大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文): 象曰。地中生木、升。君子以順德、積小以高大。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、地中(ちちゅう)に木(き)の生(しょう)ずるは升(しょう)なり。君子(くんし)以(もっ)て德(とく)に順(したが)い、小(しょう)を積(つ)みて以(もっ)て高大(こうだい)を成(な)す。

現代語訳:象伝は言う。地の中に木が生え、次第に成長していくのが升の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、自然の徳性に順い、小さな努力を積み重ねることによって、高く大きな成果を成し遂げる。

ポイント解説:
大地の中に植えられた種が、やがて芽を出し、少しずつ成長して大木となる。これが「升」の最も美しい象徴です。これを見た君子は、「德に順い」、つまり、無理な力技ではなく、自然の道理や人間としての正しい徳性に素直に従い、そして「小を積みて以て高大を成す」、つまり、日々の小さな努力や善行を、コツコツと辛抱強く積み重ねていくことによって、やがては高く大きな目標を達成し、偉大な人格を形成するのだ、という非常に大切な教えを学びます。これこそ、「益々善成」の真髄と言えるでしょう。

【むすび】

地風升の卦は、わたしたちの人生における「成長」と「発展」について、最も本質的で、そして希望に満ちた智慧を授けてくれます。

    • 1. 「小(しょう)を積(つ)みて以(もっ)て高大(こうだい)を成(な)す」 – あなたの毎日の「小さな一歩」を、心から信じよう: わたしたちが目指す姿は、一朝一夕に達成できるものではありません。大象伝が教えるように、それは日々の生活の中での、ほんの小さな努力、ささやかな善行、そして地道な学びの「積み重ね」によって、初めて成し遂げられるものです。焦らず、他人と比べず、自分自身のペースで、今日の「小さな一歩」を大切に踏みしめていきましょう。その一歩一歩が、必ず未来の大きな成長へと繋がっています。
    • 2. 「德(とく)に順(したが)う」 – 無理なく、自然体で、あなたの「善き本性」に従おう: 真の成長は、自分自身に嘘をついたり、無理強いしたりすることからは生まれません。地風升は、わたしたちが本来持っている善き性質や、自然の道理に素直に従い(德に順い)、自分らしくあることの大切さを教えています。あなたが心から「これが正しい」「こうありたい」と感じることに従って行動する時、そこには最もスムーズで、最も力強い成長のエネルギーが生まれるのです。
    • 3. 「大人(たいじん)を見(み)るに用(もち)う」 – 謙虚に学び、良き手本から智慧を吸収しよう:卦辞が示すように、わたしたちの成長の旅には、時に素晴らしい指導者やメンター(大人)との出会いが、大きな飛躍のきっかけを与えてくれます。常に謙虚な心で、周囲の人々から学び、尊敬できる人の生き方や考え方から、積極的によくなる為のヒントを吸収していきましょう。その素直な学びの姿勢が、わたしたちの成長を加速させます。

 

地風升の時は、わたしたちの内なる可能性の芽が、大地にしっかりと根を張り、天に向かって伸びやかに成長していく、喜びに満ちた時です。日々の小さな努力と、徳を積むことを忘れず、そして常に希望を胸に抱き続けるならば、わたしたちの人生は、必ずや豊かで実り多いものへとなっていくことでしょう。