1. 原文(漢文)
大道廢,有仁義。 智慧出,有大偽。 六親不和,有孝慈。 國家昏亂,有忠臣。
2. 書き下し文
大道(たいどう)廃(すた)れて、仁義(じんぎ)有(あ)り。 智慧(ちえ)出(い)でて、大偽(たいぎ)有(あ)り。 六親(りくしん)和(わ)せずして、孝慈(こうじ)有(あ)り。 国家(こっか)昏乱(こんらん)して、忠臣(ちゅうしん)有(あ)り。
3. 現代語訳
(世の中を自然に治めていた)偉大な「道」が失われてしまったから、それを補うために「仁(思いやり)」や「義(正しさ)」という人工的な道徳が主張されるようになった。
小賢しい知恵や知識がもてはやされるようになったから、それを利用した「大きな嘘(ペテンや偽善)」がまかり通るようになった。
家族や親族(六親)の仲がギスギスして悪くなってしまったから、わざわざ「親孝行(孝)」や「子への愛情(慈)」という言葉が強調されるようになった。
国家が暗く乱れて危機に陥ってしまったから、(それを救うために)命を懸ける「忠臣」という存在が目立って現れるようになった。
4. ポイント解説
第十八章は、私たちが問題の本質を見誤らないための**「逆説のパラダイムシフト」**を促す教えです。
表面的な言葉に騙されず、物事の根本(益々善成の核)を整えるための3つの視点は以下の通りです。
① 「スローガン」や「ルール」が増えるのは危険信号
「挨拶をしよう」「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)を徹底しよう」。 もしあなたの周囲でこのようなルールや道徳が声高に叫ばれ始めたら、それは「組織の空気が悪くなっている(大道が廃れている)」というサインです。 本当に良い状態の時、人は言われなくても挨拶をし、自然と助け合います。
「益々よくなる」ためには、ルールで人を縛ろうとするのをやめること。 「なぜ、このルールを言わなければならないほど、環境が悪化しているのか?」 その根本的な原因(風通しの悪さ、プレッシャーなど)に目を向け、土壌を直すことが先決です。
② 「小賢しさ(智慧)」が「偽善(大偽)」を生む
知識やノウハウが増えると、私たちは「どう見せれば自分が得をするか」「どう言えば相手を操作できるか」という計算(智慧)を働かせるようになります。 その結果生まれるのが、心にもないお世辞や、見せかけの親切(大偽)です。
計算づくの行動は、どれほど巧妙に装っても、必ずどこかで歪みが生じます。 「自分をよく見せようとする知恵を捨てる」。 素朴で、少し不器用なくらいが丁度いいのです。計算を手放した無防備なあなたにこそ、人は心を開き、本当の信頼関係が結ばれます。
③ 「言葉」を手放し、「当たり前」の境地へ還る
老子が言いたいのは「親孝行や忠義が悪い」ということではありません。 「わざわざそれを意識して、言葉にしなければならない状態が不自然だ」と言っているのです。
日々にあらゆる面で、わたしは益々よくなる——この信念を本当の意味で体現した時、私たちは「成長しなきゃ」「優しくしなきゃ」と力むことすらなくなります。 ただ、息をするように自然に、目の前のことに誠実に向き合っているだけ。
「~すべき」という道徳の鎧を脱ぎ捨ててみてください。 その時、あなたの内側から湧き上がる「作為のない本当の優しさ」が、周囲を静かに、しかし確実に変えていくはずです。

