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【易 】第13卦「天火同人(てんかどうじん)」– 心を一つに、共に大いなる目的を成し遂げる

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【易】第13卦「天火同人(てんかどうじん)」– 心を一つに、共に大いなる目的を成し遂げる

1. 卦象(:

2. 卦名: 天火同人(てんかどうじん)

3. 【この卦のメッセージ】 
上卦:乾(けん) – 天、創造、剛健、父性、大空
下卦:離(り) – 火、麗(つく)、明知、中女、太陽
全体のイメージ:下にある火(離)が、その性質として天(乾)に向かって燃え上がり、天もまたその光と熱を広く照らし出す。この「天火同人」の姿は、まるで広大な空の下で、人々が明るい火を囲んで集い、心を一つにしている様子を象徴しています。「同人」とは、「人と同(おな)じくする」、つまり、身分や立場、私的な感情を超えて、多くの人々が共通の目的や理想のもとに集まり、協力し合うことを意味します。 天の普遍性と火の明晰さが結びつき、あらゆるものを照らし出し、分け隔てなく人々を一つにする。そこには、偏狭な仲間意識や排他性ではなく、広く開かれた、公明正大な共同体の理想が描かれています。

 

4.1. 卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文): 同人于野。亨。利渉大川。利君子貞。

書き下し文: 同人(どうじん)は野(や)に于(おい)てす。亨(とお)る。大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よろ)し。君子(くんし)の貞(てい)に利(よろ)し。

現代語訳: 人々と広く野原で会同する。願いは通る。大きな川を渡るような困難な事業も成し遂げると良い。ただし、君子の正しい道を守ることが大切である。

ポイント解説:

この卦辞は、「同人」すなわち人々と心を一つにして協力し合うことの素晴らしさと、その成功の可能性を力強く示しています。「野に于てす」とは、特定の場所や集団に限定されず、広くオープンな場所で、あらゆる人々と分け隔てなく交わることを意味します。このような公明正大な交わりは、必ずや願いを通じさせ(亨る)、大きな困難(大川を渉る)をも乗り越える力を与えてくれます。ただし、その成功を持続させ、真に価値あるものとするためには、指導者や中心となる人物が「君子の貞」、つまり私心なく、正しく道義的な姿勢を貫くことが不可欠であると教えています。

4.2. 爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初爻:

門(もん)に同人(どうじん)す。咎(とが)なし。

原文:同人于門。无咎。

書き下し文:門(もん)に同人(どうじん)す。咎(とが)なし。

現代語訳:門(家の入り口など、ごく身近な場所)で人々と会同する。咎めはない。

ポイント解説:

「同人」の始まりの段階。まだ広く人々を求めるのではなく、まずは自分の家の門前、つまりごく身近な範囲で、心を通わせられる人々と交わることから始めるのが良いと示しています。私心なく、誠実に人と接するならば、咎めはありません。大きなことを成すにも、まずは足元から、身近な人々との信頼関係を築くことが大切です。

二爻:

宗(そう)に同人(どうじん)す。吝(りん)。

原文:同人于宗。吝

書き下し文:宗(そう)に同人(どうじん)す。吝(りん)。

現代語訳:一族や仲間内だけで固まって会同する。それは好ましくなく、やがて行き詰まる。

ポイント解説:

この爻は、「同人」の精神に反する行動への警告です。「宗」とは、血縁や派閥など、限られた仲間内を意味します。そのような閉鎖的な集団の中だけで固まってしまうと、視野が狭くなり、新しい発展も望めず、結局は行き詰まり、恥ずべき状況(吝)を招きます。「同人」は広く天下の人々と心を合わせるべきであり、排他的な仲間意識は戒めなければなりません。

 

三爻:

戎(じゅう)を莽(くさむら)に伏(ふ)せ、其(そ)の高陵(こうりょう)に升(のぼ)る。三歳(さんさい)興(おこ)らず。

原文:伏戎于莽、升其高陵。三歳不興。

書き下し文:戎(じゅう)を莽(もう)に伏(ふ)せ、其(そ)の高陵(こうりょう)に升(のぼ)る。三歳(さんさい)にして興(おこ)らず。

現代語訳:草むらに兵を伏せ、高い丘に登って様子をうかがう。しかし、三年経っても事を起こすことができない。

ポイント解説:

「同人」の輪に加わりたいが、相手を疑い、警戒し、なかなか心を開けない状態です。武器(戎)を隠し持ち、高い場所から相手の様子をうかがっているだけで、積極的に交わろうとしないため、いつまで経っても(三歳)真の協力関係を築くことができません。疑心暗鬼は、人との繋がりを阻害する大きな要因です。心を開き、信頼することが求められます。

四爻:

其(そ)の墉(かき)に乘(の)れども、攻(せ)むること克(あた)わず。吉(きち)。**

原文:乘其墉、弗克攻。吉。

書き下し文:其(そ)の墉(よう)に乘(じょう)ずれども、攻(せ)むること克(あた)わず。吉(きち)。

現代語訳:(争おうとして)相手の城壁に乗り上げても、攻撃することはできない(思いとどまる)。吉である。

ポイント解説:

対立や争いが起こりそうな状況ですが、土壇場で思いとどまり、攻撃を仕掛けない(攻むること克わず)ことで、結果的に吉を得ることを示しています。九四は陽爻ですが陰位にあり、剛健でありながらも柔和さも併せ持っています。感情に任せて争うのではなく、一歩引いて冷静に状況を見極め、和解の道を選ぶ賢明さが、良い結果に繋がります。

五爻:

同人(どうじん)、先(さき)には號啕(ごうとう)し後(のち)には笑(わら)う。大師(たいし)克(よ)く相(あい)遇(あ)う。**

原文:同人、先號啕而後笑。大師克相遇。

書き下し文:同人(どうじん)、先(さき)には號啕(ごうとう)し後(のち)には笑(しょう)す。大師(たいし)克(よ)く相(あい)遇(あ)う。

現代語訳:人々と会同する。最初は困難が多く、泣き叫ぶような思いもするが、後には笑い合えるようになる。多くの仲間(大師)と困難を乗り越えて、ついに互いに理解し合い、出会うことができる。

ポイント解説:

この卦の中心であり、多くの人々をまとめ上げるリーダーの爻です。真に人々と心を一つにする(同人)ためには、多くの困難や誤解、葛藤(先には號啕し)が伴うかもしれません。しかし、それらを誠実に、そして粘り強く乗り越えていくことで、最後には互いに心から理解し合い、共に笑い合えるような、素晴らしい協力関係(後に笑う、大師克く相遇う)を築くことができるのです。真の同人は、困難を分かち合うことから生まれます。

上爻:

郊(こう)に同人(どうじん)す。悔(くい)なし。

原文:同人于郊。无悔。

書き下し文:郊(こう)に同人(どうじん)す。悔(くい)なし。

現代語訳:郊外(都心から離れた、静かでこだわりのない場所)で人々と会同する。後悔することはない。

ポイント解説:

「同人」の最終段階。もはや都心での華やかな交わりや、利害に満ちた関係ではなく、名誉や利益から離れた郊外のような、静かでこだわりのない場所で、純粋な心で人々と交わる境地です。そこには、世俗的な成功や競争はなく、ただ心と心で繋がる穏やかな喜びがあります。このような無欲で自然な交わりには、何の後悔もありません。真の同人の理想的な姿の一つです。

4.3. 大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。天與火、同人。君子以類族辨物。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、天(てん)と火(ひ)と、同人(どうじん)なり。君子(くんし)以(もっ)て族(ぞく)を類(るい)し物(もの)を辨(わきま)う。

現代語訳:象伝は言う。天と火が共にあり、照らし合っているのが同人の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、人々をその種類や才能に応じて組織し、物事の是非や道理を明らかにする。

ポイント解説:

天(乾)が上にあり、火(離)が下から天に向かって燃え上がり、互いに照応し合っているのが「同人」の象徴です。これを見た君子は、「族を類し物を辨う」、つまり、人々をその特性や才能に応じて適切に組織し、それぞれの役割を明確にし(族を類し)、さらに物事の道理や是非善悪を明らかにして、共通の理解と目標を示す(物を辨う)ことの重要性を学びます。このように、人々がそれぞれの個性を活かしつつ、共通の理解のもとに調和的に協力し合うことで、初めて真の「同人」が実現するのです。

5. むすび

天火同人の卦は、わたしたちが他者と心を通わせ、共通の理想に向かって協力し合うことの素晴らしさ、そしてそのために必要な心のあり方について、多くの深い智慧を授けてくれます。

 

  • 1. 「君子(くんし)の貞(てい)」 – 共通の目的は、常に正しく、そして公(おおやけ)なるものであれ: 人々が心を一つにして力を合わせる時、その共通の目的や理想が、私利私欲や偏狭なものではなく、多くの人々にとって善きもの(君子の貞)であることが何よりも大切です。わたしたちも、「益々善成」の活動において、常にその目的が公明正大であるか、多くの人々の幸福に繋がるものであるかを自問し続けたいものです。
  • 2. 「族(ぞく)を類(るい)し物(もの)を辨(わきま)う」 – 個性を尊重し、明確なビジョンを共有しよう: 大象伝が教えるように、真の協力関係は、それぞれの個性や才能を認め合い、活かし合うことから生まれます。そして、全員が納得できる明確な目標やルール(物を辨う)を共有することで、集団は同じ方向へ力強く進むことができます。わたしたちも、家庭や職場、コミュニティにおいて、多様性を尊重し、開かれた対話を通じて、共通の理解と目標を育んでいきましょう。
  • 3. 「先(さき)には號啕(ごうとう)し後(のち)には笑(わら)う」 – 困難を共に乗り越えることで、絆は深まる: 九五の爻が示すように、真に心を一つにする過程には、多くの困難や葛藤が伴うかもしれません。しかし、それらの課題から逃げることなく、誠実に、そして粘り強く向き合い、共に乗り越えていくことで、わたしたちの絆はより一層深まり、最後には心からの笑顔と達成感を分かち合うことができるでしょう。「益々善成」の道もまた、そのような仲間との真摯な関わりの中で、より豊かに開かれていくのです。

天火同人の時は、わたしたちが孤独から抜け出し、他者との温かい繋がりの中で、共通の夢や理想を追い求め、そしてそれを実現していくという、人間として最も素晴らしい喜びの一つを体験できる時です。開かれた心、誠実な態度、そして公への貢献という精神を胸に、わたしたちもまた、多くの人々と手を携え、この世界を「益々よくする」ための、光り輝く「同人」の輪を広げていきましょう。

 

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