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【易】第17卦「沢雷随(たくらいずい)」– 時と人に喜びて随(したが)い、調和する

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【易の叡智 第17卦】「沢雷随(たくらいずい)」– 時と人に喜びて随(したが)い、調和する

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 沢雷随(たくらいずい)

4. 【この卦のメッセージ】
上卦(じょうか):兌(だ) – 沢、喜び、悦楽、少女、口
下卦(かか):震(しん) – 雷、動く、奮い立つ、長男
全体のイメージ: 下にある雷(震)が力強く動き出し、その動きに呼応するように、上にある沢(兌)が喜びをもって随っていく。この「沢雷随」の姿は、まるで春の雷鳴に誘われて、大地が潤い、草木が芽吹き、万物が喜々として活動を開始するような、自然で調和の取れた「随い」の形を象徴しています。「随」という文字は、「ついて行く」「従う」という意味合いを持ちます。 ここでは、下の雷(長男=能動的な力、リーダー)が先に動き、上の沢(少女=受動的な喜び、フォロワー)がそれに喜んで随うという、理想的な主従関係や、時代の変化に柔軟に適応していく様が描かれています。無理な抵抗や自己主張ではなく、大きな流れや優れた指導者に、喜びと信頼をもって随うことの賢明さを示唆しています。

1. 卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):隨。元亨。利貞。无咎。

書き下し文: 隨(ずい)は元(おおい)に亨(とお)る。貞(ただ)しきに利(よろ)し。咎(とが)なし。

現代語訳: 随の時は、願いは根本から大きく通り、成就する。ただし、正しい道を守ることが大切である。そうすれば咎めはない。

ポイント解説:
この卦辞は、「随」の時が非常に吉運であり、物事がスムーズに進展し、大きな成功(元亨)が得られることを示しています。ただし、その「随う」という行為が、真に良い結果をもたらすためには、「貞(ただしきに利し)」、つまり、随う対象が正しく、また随う側の姿勢も誠実で正しい道にかなっていることが不可欠です。そのような正しい「随い」であれば、何の咎めもなく(咎なし)、素晴らしい成果を期待できます。誰に、何に、どのように随うか、その「質」が問われる時です。

2. 爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語**

初九(しょきゅう):

官(かん)渝(かわ)る有り。貞(てい)なれば吉(きち)。門(もん)を出(い)でて交(まじ)われば功(こう)有り。

原文: 官有渝。貞吉。出門交有功。

書き下し文: 官(かん)渝(かわ)る有(あ)り。貞(てい)なれば吉(きち)。門(もん)を出(い)でて交(まじ)われば功(こう)有(あ)り。

現代語訳:状況や役職(官)に変化がある。正しい道を守れば吉である。積極的に外に出て人々と交われば功績があるだろう。

ポイント解説:

随」の始まり。周囲の状況や自分の立場に変化(官渝る有り)が起こりやすい時です。このような変化の時には、動揺せず、正しい道(貞)をしっかりと守ることが大切です。そして、内にこもらず、積極的に外の世界(門を出でて)に出て、多くの人々と交わる(交われば)ことで、新しい発見や協力が得られ、功績(功有り)を上げることができます。変化を恐れず、オープンな姿勢でいることが吉を呼びます。

六二(りくじ):

小子(しょうし)に係(かか)れば、丈夫(じょうぶ)を失(うしな)う。**

原文: 係小子、失丈夫。

書き下し文: 小子(しょうし)に係(かか)れば、丈夫(じょうぶ)を失(うしな)う。

現代語訳: 未熟な者(小子)にばかり心をかけていれば、本当に頼りになる立派な人物(丈夫)を失ってしまう。

ポイント解説:
誰に随うべきか、その選択の重要性を示しています。目先の小さな利益や、未熟で頼りない相手(小子)にばかり執着していると、本当に価値のある、将来性のある人物や機会(丈夫)を見逃してしまいます。感情や私情に流されず、長期的な視点で、誰に(何に)随うべきかを賢明に判断しなければなりません。

六三(りくさん):

丈夫(じょうぶ)に係(かか)れば、小子(しょうし)を失(うしな)う。隨(したが)いて求(もと)むる有(あ)らば得(う)。貞(てい)に居(お)るに利(よろ)し。**

原文:係丈夫、失小子。隨有求得。利居貞。

書き下し文:。丈夫(じょうぶ)に係(かか)れば、小子(しょうし)を失(うしな)う。隨(したが)いて求(もと)むる有(あ)らば得(う)。貞(てい)に居(お)るに利(よろ)し。

現代語訳:立派な人物(丈夫)に心をかければ、未熟な者(小子)との縁は失うかもしれない。しかし、(正しい者に)随い、求めるものがあれば必ず得られる。正しい道に安んじているのが良い。

ポイント解説:

六二とは対照的に、ここでは賢明な選択をしています。本当に価値のある、頼りになる人物や理念(丈夫)に随うことを選べば、たとえ目先の小さな繋がり(小子)を失うことになったとしても、長い目で見れば、求めるものを必ず得ることができます(隨いて求むる有らば得)。正しい選択をし、その道に安んじて(貞に居るに利し)、誠実に努力を続けることの重要性を示しています。

九四(きゅうし):

隨(したが)いて獲(う)る有り。貞(てい)なれども凶(きょう)。孚(まこと)有りて道(みち)に在(あ)り、明(めい)を以(もっ)てせば、何(なん)の咎(とが)あらん。**

原文:隨有獲。貞凶。有孚在道、以明、何咎。

書き下し文:隨(したが)いて獲(う)る有(あ)り。貞(てい)なりと雖(いえど)も凶(きょう)。孚(まこと)有(あ)りて道(どう)に在(あ)り、明(めい)を以(もっ)てせば、何(なん)の咎(とが)あらん。

現代語訳:(私欲から人に)随って利益を得る。たとえそれが一時的に正しいように見えても、結局は凶となる。しかし、真心をもって正しい道にあり、その道理を明らかにするならば、どうして咎めがあろうか。

ポイント解説:

            この爻は、随う動機について深く問いかけています。もし私利私欲から人に随い、一時的に利益(獲る有り)を得たとしても、その動機が正しくなければ(貞なりと雖も)、結局は凶運を招きます。しかし、真心(孚有り)をもって、人としての正しい道(道に在り)を歩み、その道理を明確に理解して(明を以てせば)随うのであれば、何の咎めもありません。何に、なぜ随うのか、その動機の純粋さが問われます。

九五(きゅうご):

嘉(よみ)するに孚(まこと)あり。吉(きち)。

原文:孚于嘉。吉。

書き下し文:嘉(か)に孚(ふ)す。吉(きち)。

現代語訳:素晴らしい美徳や善行に対して、心からの誠実さをもって随う。吉である。

ポイント解説:
君主の位にあり、中心となって人々を導く立場です。この爻は、素晴らしいもの、善きもの(嘉)に対して、純粋な真心(孚)をもって随い、また人々にもそのように随うことを促している状態です。私心なく、普遍的な善や美徳に心から従う姿勢は、必ずや大きな吉(吉)をもたらします。リーダー自身が、まず善なるものに心から従うことの重要性を示しています。

上六(じょうりく):

之(これ)を拘係(こうけい)し、乃(すなわ)ち之(これ)に從維(じゅうい)す。王(おう)用(もっ)て西山(せいざん)に亨(きょう)す。**

原文:拘係之、乃從維之。王用亨于西山。

書き下し文:之(これ)を拘係(こうけい)し、乃(すなわ)ち之(これ)に從維(じゅうい)す。王(おう)用(もっ)て西山(せいざん)に亨(きょう)す。

現代語訳:固く引き留められ、そしてそれに従い、固く結びつけられる。王はこれを用いて西山で祭祀を行う(深く信頼し、その功績を称える)。

ポイント解説:
随」の時の最終段階。これまでの誠実な随いによって、非常に固い信頼関係(拘係し、從維す)が築かれ、その功績が認められる時です。「王用て西山に亨す」とは、王がその人物を深く信頼し、国の安泰を祈る重要な祭祀を任せるほどであることを示し、最高の栄誉と安定を表します。誠実に随い続けた結果、大きな信頼と確固たる地位を得る、という素晴らしい結末です。

3. 大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。澤中有雷、隨。君子以嚮晦入宴息。

書き下し文: 象(しょう)に曰(いわ)く、澤中(たくちゅう)に雷(らい)有(あ)るは隨(ずい)なり。君子(くんし)以(もっ)て晦(かい)に嚮(むか)いて宴息(えんそく)に入(い)る。

現代語訳:象伝は言う。沢の中に雷が鳴り響き、万物がそれに随い動くのが随の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、日が暮れて暗くなれば、家に入って休息し、英気を養う。

ポイント解説:
沢の中で雷が鳴り響き、その動きに水や生物が呼応する。これが「随」の自然な姿です。君子は、この自然の摂理に学び、一日の活動(随うべき時に随い、動くべき時に動く)が終われば、「晦に嚮いて宴息に入る」、つまり、日が暮れて暗くなれば、無理に活動を続けず、家に入って休息し、食事を楽しみ、次の日のための英気を養うことの重要性を理解します。活動と休息の適切なリズム、そして時に従うことの賢明さを示しています。

4. 【この卦をわたしたちの「益々善成」に活かす】 – 今日のあなたへの贈り物

沢雷随の卦は、わたしたちが人生の様々な局面で、どのように「随う」べきか、そしてその「随い」がいかにしてわたしたちの成長と幸福に繋がるかという、しなやかで奥深い智慧を授けてくれます。

沢雷随の時は、わたしたちが自己の確立と他者との調和、そして時代の変化への適応という、人生における重要なテーマを学ぶ時です。喜びと信頼をもって、善き流れに賢明に随うことで、わたしたちの人生はより豊かに、より円滑に、そしてより喜びに満ちたものへとなることでしょう。

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