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【易】 第19卦「地沢臨(ちたくりん)」– 恵み近づき万事好調、教え導き共に栄える春

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【易】 第19卦「地沢臨(ちたくりん)」– 恵み近づき万事好調、教え導き共に栄える春

1. 卦象(かしょう):

 

2. 名称(めいしょう): 地沢臨(ちたくりん)

3.  【この卦のメッセージ】
上卦(じょうか):坤(こん) – 地、受容、柔順、母性、大衆
下卦(かか):兌(だ) – 沢、喜び、悦楽、少女、口(言葉)

全体のイメージ:
喜びと潤いに満ちた沢(兌)の上に、万物を包容し育む広大な大地(坤)が臨んでいる。この「地沢臨」の姿は、まるで春の訪れのように、陽の気(下の二つの陽爻)が力強く成長し、大地(上の陰爻たち)がそれらを温かく見守り、恵みを与えている、非常に調和的で発展的な状況を象徴しています。「臨」という文字には、「大きなものが小さいものに臨む」「上の者が下の者に近づき、見守り導く」といった意味合いがあります。 沢は人々に喜びと潤いを与え、大地はその沢を支え、さらに豊かな実りをもたらす。このように、指導する側とされる側、あるいは社会と個人が、互いに喜びと慈しみをもって接し、共に成長し繁栄していく、理想的な調和の状態がここに描かれています。まさに、万事が好調に進む、希望に満ちた春のような時です。

1. 卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):臨。元亨。利貞。至于八月有凶。

書き下し文: 臨(りん)は元(おおい)に亨(とお)る。貞(ただ)しきに利(よろ)し。八月(はちがつ)に至(いた)りて凶(きょう)有(あ)り。

現代語訳:臨の時は、願いは根本から大きく通り、成就する。正しい道を守ることが大切である。ただし、(この好調も永遠ではなく)八月頃には衰運の兆しが現れ、凶となる可能性がある。

ポイント解説:
この卦辞は、「臨」の時が非常に大きな成功と発展(元亨)をもたらす大吉の時であることを高らかに告げています。正しい道(貞)を守り続けることで、その恩恵はさらに確かなものとなります。しかし、同時に「八月に至りて凶有り」という重要な警告も含まれています。これは、どんなに素晴らしい好調期も永遠には続かず、やがては衰退期(八月は秋、陰の気が増す時期の象徴)が訪れるという、宇宙のサイクルの厳粛な真理を示しています。つまり、好調な時こそ油断せず、将来への備えを怠らないこと、そして盛者必衰の理を心に留めておくことの重要性を教えているのです。

2. 爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初九(しょきゅう):

咸臨(かんりん)。貞(てい)なれば吉(きち)。

原文:咸臨。貞吉。

書き下し文:咸臨(かんりん)す。貞(てい)なれば吉(きち)。

現代語訳:人々が心を一つにして共に臨む。正しい道を守れば吉である。

ポイント解説:
「臨」の時の始まり。下の陽爻が共に進み出るように、皆が同じ心(咸)で、共通の目的に向かって積極的に臨んでいく時です。この初期の段階では、私心なく、正しい道(貞)を守り、皆で協力し合うならば、必ず良い結果(吉)が得られます。チームワークと誠実さが成功の鍵です。

九二(きゅうじ):

咸臨(かんりん)。吉(きち)にして利(よろ)しからざるなし。**

原文:咸臨。吉无不利。

書き下し文:咸臨(かんりん)す。吉(きち)にして利(よろ)しからざるなし。

現代語訳:人々が心を一つにして共に臨む。非常に吉であり、何事においても不利益なことはない。

ポイント解説:
初九と同様に、皆が心を合わせて事に臨む状況ですが、九二は内卦の中心にあり、より安定した力を持っています。そのため、その影響力はさらに大きく、何をやっても良い結果(吉にして利しからざるなし)に恵まれる、この上なく幸運な時です。誠実な協力関係が、あらゆる障害を乗り越える力となります。

六三(りくさん):

甘臨(かんりん)。利(よろ)しき攸(ところ)なし。既(すで)に之(これ)を憂(うれ)うれば、咎(とが)なし。**

原文:甘臨。无攸利。既憂之、无咎。

書き下し文:甘臨(かんりん)す。利(よろ)しき攸(ところ)なし。既(すで)に之(これ)を憂(うれ)うれば、咎(とが)なし。

現代語訳:甘い言葉や態度で人に臨む。それでは何の利益もない。しかし、もしそのやり方のまずさに既に気づき、憂いているならば、咎めはない。

ポイント解説:
この爻は、「臨」の時の注意点を示しています。ただ甘い言葉で人を取り込もうとしたり、安易な方法で物事を進めようとしたりする「甘臨」の態度は、結局何の利益ももたらしません。しかし、もし自分自身のそのような甘さや安直さに気づき、それを反省し、改めようと憂いている(既 に之を憂うれば)ならば、大きな過ち(咎)には至らずに済みます。自己反省と軌道修正の重要性を示しています。

六四(りくし):

至臨(しりん)。咎(とが)なし。

原文:至臨。无咎。

書き下し文:至臨(しりん)す。咎(とが)なし。

現代語訳:誠意を尽くして人々に臨む。咎めはない。

ポイント解説:
六四は上の卦(坤=地)の始まりにあり、下の陽爻たちに最も近い陰爻です。柔順な徳を持ち、下の者たちに対して、真心から、そして積極的に近づき、その声に耳を傾けようとする「至臨」の姿勢です。このような誠実で分け隔てない態度は、人々からの信頼を得て、何の咎めもなく物事を円滑に進めることができます。心からの歩み寄りが鍵です。

六五(りくご):

知臨(ちりん)す。大君(たいくん)の宜(よろ)しきなり。吉(きち)。**

原文:知臨。大君之宜。吉。

書き下し文:知臨(ちりん)す。大君(たいくん)の宜(ぎ)なり。吉(きち)。

現代語訳:知恵をもって人々に臨む。それは偉大な君主としてふさわしいあり方である。吉である。

ポイント解説:
君主の位にあり、全てを包容する坤の徳の中心です。ここでは、単に優しさだけでなく、深い知恵(知臨)をもって人々に臨み、物事を適切に処理していくことが求められます。状況を正しく理解し、賢明な判断を下し、人々を的確に導く。そのような知恵に基づいたリーダーシップは、偉大な君主として最もふさわしいあり方(大君の宜しきなり)であり、大きな吉(吉)をもたらします。

上六(じょうりく):

敦臨(とんりん)。吉(きち)にして咎(とが)なし。

原文:敦臨。吉无咎。

書き下し文:敦臨(とんりん)す。吉(きち)にして咎(とが)なし。

現代語訳:篤く誠実な心で人々に臨む。吉であり、咎めもない。

ポイント解説:
「臨」の時の最終段階。もはや実権からは退いた立場かもしれませんが、その心には篤く誠実な思いやり(敦臨)が満ちています。見返りを求めることなく、ただただ人々のためを思って、温かく見守り、助言を与える。そのような純粋で篤い心遣いは、大きな吉(吉)をもたらし、何の咎めもありません。完成された人格者の、静かで深い影響力を示しています。

3. 大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。澤上有地、臨。君子以教思无穷、容保民无疆。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、澤(さわ)の上(うえ)に地(ち)有(あ)るは臨(りん)なり。君子(くんし)以(もっ)て教え思(おも)うこと窮(きわま)りなく、民(たみ)を容(い)れ保(やす)んずること疆(かぎり)なし。

現代語訳:象伝は言う。沢の上に大地が広がっているのが臨の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、教え導き、思索することを無限に行い、民衆を包容し保護することに限界を設けない。

ポイント解説:
沢(兌)が大地(坤)の下にあり、大地がその上に臨んで万物を潤し育む。これが「臨」の象徴です(※伝統的な解釈では、地が上で沢が下ですが、意味するところは同じく、上のものが下のものに恵みを与える様です)。君子は、この姿に学び、「教え思うこと窮まりなく」、つまり、絶えず人々に教えを施し、また自らも深く思索し学び続けることを止めません。そして、「民を容れ保んずること疆りなし」、つまり、限りない慈愛と包容力をもって人々を受け入れ、その生活を保護し、安心させるのです。これこそが、真に人々を益し、社会を豊かにするリーダーのあり方であると教えています。

4. 【むすび】

地沢臨の卦は、わたしたちが他者と関わり、導き、そして共に成長していく上で、非常に温かく、そして実践的な智慧を授けてくれます。この古代の叡智を、わたしたちの「日々新たに、益々よくなる」ための糧として、どのように活していけるでしょうか。

地沢臨の時は、わたしたちの周りに温かい春の日差しが降り注ぎ、あらゆるものが成長し、調和していく、恵みに満ちた時です。この素晴らしい機会を最大限に活かし、自分自身を磨き、他者に貢献し、そして感謝の心を育むことで、わたしたちの人生は、より一層豊かで、喜びに満ちたものになるでしょう。

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