六四卦 PR

【易経】第32卦「雷風恒(らいふうこう)」– 変わらぬ真心で道を貫き、永続を築く

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

【易経】第32卦「雷風恒(らいふうこう)」– 変わらぬ真心で道を貫き、永続を築く

 

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 雷風恒(らいふうこう)

3.【この卦のメッセージ】
上卦(じょうか):震(しん) – 雷、動く、奮い立つ、長男、夫
下卦(かか):巽(そん) – 風、木、入る、従順、長女、妻
全体のイメージ:下にある風・木(巽)は、しなやかで従順な性質を持ち、上にある雷(震)は、力強く動き、奮い立つ性質を持っています。「雷風恒」の姿は、外では夫(雷)が力強く活動し、内では妻(風)が柔順に家を守り支える、という夫婦の道が長く続く(恒久である)様を象徴しています。また、雷が鳴り響き、風が吹き渡るという自然現象もまた、絶えず繰り返され、変わることのない宇宙の営みの一部です。 「恒」という文字は、「常に変わらない心」を意味し、ここでは一時的な感情や状況の変化に流されることなく、一度定めた正しい道や関係性を、長く久しく守り続けることの重要性を示しています。それは、確固たる信念と、柔軟な適応力とが調和して初めて成り立つ、真の「恒久」の姿です。

卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):恒。亨。无咎。利貞。利有攸往。

書き下し文:恒(こう)は亨(とお)る。咎(とが)なし。貞(ただ)しきに利(よろ)し。往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)るに利(よろ)し。

現代語訳:恒(物事を長く続けること)は、願いは通る。咎めはない。ただし、正しい道を守ることが大切である。目的を持って進んでいくのが良い。

ポイント解説:
この卦辞は、「恒」すなわち物事を長く久しく続けることの価値と、その成功の可能性を明確に示しています。「亨り、咎なし」とは、正しい方法で継続するならば、必ず願いは成就し、問題も起こらないということです。しかし、そのための大前提として「貞しきに利し」とあり、ただ長く続ければ良いというわけではなく、その継続が正しい道徳や目的に基づいていることが不可欠であると強調しています。そして、そのような正しい「恒」であれば、「往く攸有るに利し」、つまり、明確な目標を持って前進していくことが、さらなる発展と成功に繋がるのです。

爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初六(しょりく):

浚恒(しゅんこう)。貞(てい)なれども凶(きょう)。利(よろ)しき攸(ところ)なし。

原文:浚恒。貞凶。无攸利。

書き下し文:浚恒(しゅんこう)す。貞(てい)なりと雖(いえど)も凶(きょう)。利(よろ)しき攸(ところ)なし。

現代語訳:初めからあまりに深く恒久を求めすぎる。正しい道を守ろうとしても、結果は凶である。何の利益もない。

ポイント解説:
「恒」の始まりの段階。まだ物事の本質や適切な進め方も分からないうちから、あまりにも深く、完璧な「恒(永続性)」を求めすぎている(浚恒)状態です。焦って結果を求めたり、最初から高すぎる理想を掲げたりすると、たとえ正しい道(貞)を目指していても、かえって無理が生じ、凶運を招きます。何事も、まずは基礎を固め、段階的に進むことが大切です。

九二(きゅうじ):

悔(くい)亡(ほろ)ぶ。

原文:悔亡。

書き下し文:悔(くい)亡(ほろ)ぶ。

現代語訳:後悔が消え去る。

ポイント解説:
九二は陽爻で中正の徳を備え、下の初六の焦りや行き過ぎを戒め、バランスの取れた「恒」を実践できる位置にあります。そのため、これまでの小さな過ちや後悔も自然と消え去り、安定した状態へと向かいます。無理なく、自然体で、正しい道を継続できていることを示しています。

九三(きゅうさん):

其(そ)の德(とく)を恒(つね)にせず。或(あるい)は之(これ)に羞(はじ)を承(う)く。貞(てい)なれども吝(りん)。

原文:不恒其德。或承之羞。貞吝。

書き下し文:九三(きゅうさん)。其(そ)の德(とく)を恒(つね)にせず。或(あるい)は之(これ)に羞(しゅう)を承(う)く。貞(てい)なりと雖(いえど)も吝(りん)。

現代語訳:その徳が一貫していない。そのため、あるいは恥ずべき事態を招くかもしれない。正しい道を守っていても、困難や後悔が伴う。

ポイント解説:
この爻は、徳や信念が一貫せず、気分や状況によって態度が変わりやすい(其の德を恒にせず)状態を警告しています。そのような一貫性のなさは、周囲からの信頼を失い、恥ずかしい思い(羞を承く)をする原因となります。たとえ個々の行動が正しくても(貞なりと雖も)、根本的なところで徳が一貫していなければ、結局は困難や後悔(吝)から逃れられません。心の軸をしっかりと持つことの重要性を示しています。

九四(きゅうし):田(かり)して禽(えもの)なし。

原文:田无禽。

書き下し文:田(でん)して禽(きん)なし。

現代語訳:狩りをしても獲物がいない。

ポイント解説:
九四は陽爻ですが陰位にあり、その力が十分に発揮できない、あるいは努力の方向性が間違っているために、成果が得られない状況を示しています。一生懸命に狩り(努力)をしても、獲物(成果)がいない。これは、自分の能力や才能を、それにふさわしくない場所や方法で使おうとしているのかもしれません。自分のいるべき場所、活かすべき才能を、改めて見つめ直す必要があることを示唆しています。

六五(りくご):

其(そ)の德(とく)を恒(つね)にす。貞(てい)なり。婦人(ふじん)は吉(きち)、夫子(ふうし)は凶(きょう)。

原文:恒其德。貞。婦人吉、夫子凶。

書き下し文:其(そ)の德(とく)を恒(つね)にす。貞(てい)なり。婦人(ふじん)は吉(きち)、夫子(ふうし)は凶(きょう)。

現代語訳:その徳を一貫して守る。正しいあり方である。婦人であれば吉であるが、男性(特に指導的立場にある者)であれば凶となる。

ポイント解説:
この爻は、柔順中正の徳(六五)を一貫して守り続ける(其の德を恒にす)こと自体は正しい(貞なり)としながらも、そのあり方が立場によって吉凶を分けることを示しています。「婦人」は、ここでは柔順に従う立場、あるいは家庭を守る役割の象徴であり、そのような立場であれば、この一貫した柔順さは吉となります。しかし、「夫子」(男性、特に外に向かって積極的に事を成すべき指導的立場にある者)が、ただ柔順であるだけに終始し、変化や決断を避けていては、事を誤り凶となる、という解釈があります。立場に応じた「恒」のあり方が問われます。

上六(じょうりく):

恒(こう)を振(ふる)う。凶(きょう)。

原文:振恒。凶。

書き下し文:恒(こう)を振(ふる)う。凶(きょう)。

現代語訳:絶えず動き回り、落ち着きなく恒常性を求めようとする。凶である。

ポイント解説:
「恒」の時の最終段階ですが、ここでは落ち着きがなく、絶えず動き回り(振う)、真の恒常性を見いだせない状態です。あれこれと手を出し、一つのことをじっくりと続けることができず、結果として何も成し遂げられない。あるいは、変化すべき時に過去のやり方に固執し、不適切な形で「恒」を求めようとする。このような落ち着きのない、あるいは頑なな「恒」の求め方は、凶運を招きます。真の恒久性は、内なる安定と適切な変化のバランスの中にあるのです。

大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。雷風、恒。君子以立不易方。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、雷風(らいふう)は恒(こう)なり。君子(くんし)以(もっ)て立(た)ちて方(ほう)を易(か)えず。

現代語訳:象伝は言う。雷と風が互いに作用し合い、その活動が絶え間なく続くのが恒の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、確固たる自分の立場を確立し、その進むべき方向や主義を変えない。

ポイント解説:
雷(震)が動き、風(巽)がそれに随って吹き渡る。この雷と風のダイナミックな相互作用が、絶え間なく繰り返され、一定の秩序を保ちながら持続していくのが「恒」の象徴です。これを見た君子は、「立ちて方を易えず」、つまり、自分自身の確固たる立場や、進むべき正しい方向性、守るべき根本的な主義や価値観を、外部の状況の変化にいたずらに影響されることなく、しっかりと堅持し続けることの重要性を学びます。真の「恒」とは、表面的な変化に動じない、内なる不動の軸を持つことなのです。

【むすび】

雷風恒の卦は、わたしたちが「継続すること」の真の意味と、そのために必要な心のあり方について、深く温かい智慧を授けてくれます。

雷風恒の時は、わたしたちが目先の変化に一喜一憂することなく、長期的な視点に立ち、本当に価値のあるものを粘り強く、そして誠実に育て続けていくことの尊さを学ぶ時です。それは、一見地味かもしれませんが、最も確実で、そして最も力強い道です。あなたも、自分自身の「恒なるもの」を見つけ、それを大切に育むことで、時を経ても色褪せない、真の豊かさと安定を、人生という名の庭に築いていけるでしょう。

 

グッズはこちら