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【易経】 第40卦「雷水解(らいすいかい)」– 困難解けて道開ける、許しと感謝で踏み出す新たなる一歩

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【易経】 第40卦「雷水解(らいすいかい)」– 困難解けて道開ける、許しと感謝で踏み出す新たなる一歩

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 雷水解(らいすいかい)

3. 【この卦のメッセージ】
上卦(じょうか):震(しん) – 雷、動く、奮い立つ、長男
下卦(かか):坎(かん) – 水、険難、陥る、悩み、雨
全体のイメージ: 下にある険しい水(坎)の困難や危険が、上にある雷(震)の力強い動きによって、打ち破られ、解き放たれる。この「雷水解」の姿は、まるで春の雷鳴が轟き、冬の間に凍てついていた氷や雪解け水が一気に流れ出し、万物が活動を再開するような、解放と再生の瞬間を象徴しています。「解」という文字は、角で物を解きほぐす様を表し、「解ける」「解放される」「解決する」といった意味合いを持ちます。 困難や障害(坎)が、力強い行動や決断(震)によって取り除かれ、滞っていた物事が再びスムーズに流れ始める。そこには、安堵感と共に、新しい始まりへの希望と活力が満ち溢れています。長く続いた緊張が解け、心が解放される時です。

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卦辞(かじ)– この卦全体のテーマ

原文(漢文):解。利西南。无所往、其來復吉。有攸往、夙吉。

書き下し文: 解(かい)は西南(せいなん)に利(よろ)し。往(ゆ)く所(ところ)无(な)ければ、其(そ)れ来(きた)り復(かえ)りて吉(きち)。往(ゆ)く攸(ところ)有(あ)らば、夙(つと)にすれば吉(きち)。

現代語訳: 解(困難が解ける時)は、西南の方へ行くのが良い。もし特に行くべき所がないならば、元の穏やかな状態に復帰するのが吉である。もし行くべき所があるならば、早めに行動するのが吉である。

ポイント解説:
この卦辞は、「解」の時が訪れた際の、賢明な行動指針を示しています。「西南に利し」とは、坤(地、大衆、平易)の方角である西南へ向かう、つまり、困難が去った後は、人々のいる平穏な場所に戻り、休息し、あるいは大衆と共に事をなすのが良い、という意味です。「往く所无ければ、其れ来り復りて吉」とは、大きな問題が解決し、他に急いでやるべきことがなければ、無理に新しいことを始めるのではなく、まずは平穏な日常に立ち返り、心身を回復させることが吉である、ということです。しかし、「往く攸有らば、夙にすれば吉」とは、もし解決すべき残務や、新たに取り組むべき明確な目標があるならば、好機を逃さず、早急に行動(夙にすれば)するのが良い、と教えています。状況に応じた適切な行動が求められます。

爻辞(こうじ)– 各爻(こう)が示す変化の機微と物語

初六(しょりく):

咎(とが)なし。

原文:无咎。

書き下し文:咎(とが)なし。

現代語訳:咎めはない。

ポイント解説:
「解」の時の始まり。困難が解け始めたばかりで、まだ大きな動きはありませんが、すでに良い方向へと向かっているため、何の咎めもありません。これまでの苦労が報われ始め、安堵感が漂う時です。静かに状況の好転を受け入れ、無理をしないことが大切です。

九二(きゅうじ):

田(かり)して三狐(さんこ)を獲(え)、黄矢(こうし)を得(う)。貞(てい)なれば吉(きち)。

原文:田獲三狐、得黄矢。貞吉。

書き下し文:田(でん)して三狐(さんこ)を獲(え)、黄矢(こうし)を得(う)。貞(てい)なれば吉(きち)。

現代語訳:狩りをして三匹の狐を捕らえ、さらに貴重な黄色の矢を得る。正しい道を守れば吉である。

ポイント解説:
この爻は、困難を解決する過程で、障害となっていたもの(三狐=邪悪なもの、妨害者)を排除し、さらに貴重なもの(黄矢=中庸の徳、正しい道、あるいは褒美)を得ることを示しています。九二は中正の徳を備えており、その正しい努力(貞なれば)によって、問題解決と同時に、さらなる利益や名誉も手にすることができる吉運です。

六三(りくさん):

負(お)い且(か)つ乘(の)り、寇(あだ)の至(いた)るを致(いた)す。貞(てい)なりと雖(いえど)も吝(りん)。

原文:負且乘、致寇至。貞吝。

書き下し文:負(ふ)し且(か)つ乘(じょう)じ、寇(こう)の至(いた)るを致(いた)す。貞(てい)なりと雖(いえど)も吝(りん)。

現代語訳:荷物を背負いながら、さらに乗り物に乗っている(分不相応な振る舞い)。それは盗賊(災い)を招き寄せることになる。たとえ正しい心を持っていたとしても、困難や恥辱が伴う。

ポイント解説:
この爻は、困難が解け始めた油断から、分不相応な振る舞いや、身の程知らずな行動(負い且つ乘る)に出てしまうことへの警告です。そのような態度は、新たな災難(寇の至るを致す)を引き起こす原因となります。たとえ本人は正しいつもり(貞なりと雖も)でも、その不適切な行動は、周囲からの反感を買い、困難や恥辱(吝)を招くでしょう。謙虚さを忘れ、調子に乗ることの危険性を示しています。

九四(きゅうし):

爾(なんじ)の拇(おやゆび)を解(と)け。朋(とも)至(いた)りて斯(これ)に孚(まこと)あり。

原文:解而拇。朋至斯孚。

書き下し文:爾(なんじ)の拇(ぼ)を解(と)く。朋(ほう)至(いた)りて斯(これ)に孚(ふ)せん。

現代語訳:あなたの足の親指(小さな障害や、つまらない人物との関係)を解き放ちなさい。そうすれば、本当に信頼できる仲間がやって来て、互いに誠実な関係を結ぶことができるだろう。

ポイント解説:
この爻は、前進を妨げている小さな障害や、自分にとって良くない影響を与える人間関係(拇)から、思い切って離れる(解く)ことの重要性を示しています。それらを手放すことで、初めて、本当に信頼でき、共に成長していける仲間(朋)との出会いが訪れ、誠実な協力関係(孚)を築くことができるのです。時には、何かを「解き放つ」勇気が、新しい道を開きます。

六五(りくご):

君子(くんし)維(こ)れ解(と)くる有り。吉(きち)。小人(しょうじん)に孚(まこと)有(あ)らしむ。

原文:君子維有解、吉。有孚于小人。

書き下し文:君子(くんし)維(た)だ解(と)くる有(あ)り。吉(きち)。小人(しょうじん)に孚(ふ)有(あ)らしむ。

現代語訳:君子(徳の高い人)は、ただ困難が解けるのを待つだけでなく、自らも積極的に関わり解決する。そうすれば吉である。そして、その徳によって徳の低い小人物にも信頼されるようになる。

ポイント解説:
君主の位にあり、柔順中正の徳を備えています。この爻は、徳の高い君子が、ただ困難が自然に解決するのを待つだけでなく、自らも積極的に問題解決に関与し、人々を解放する(維れ解くる有り)ことで、吉を得ることを示しています。そして、その公正で徳のある振る舞いは、徳の低い人々(小人)からも信頼と尊敬を集め、社会全体の調和に貢献します。リーダーの積極的な関与と徳の重要性を示しています。

上六(じょうりく):

公(こう)用(もっ)て高墉(こうよう)の上(うえ)の隼(はやぶさ)を射(い)る。之(これ)を獲(え)て、利(よろ)しからざるなし。

原文:公用射隼于高墉之上。獲之、无不利。

書き下し文:公(こう)用(もっ)て高墉(こうよう)の上(うえ)の隼(しゅん)を射(い)る。之(これ)を獲(う)れば、利(よろ)しからざるなし。

現代語訳:君主が高い城壁の上にいる隼(害鳥、あるいは悪の象徴)を射止める。これを得て(排除して)、不利益なことは何もない。

ポイント解説:
「解」の時の最終段階。全ての困難が解決し、最後に残った悪の根源や、害をなす存在(高墉の上の隼)を、君主(公)が断固たる決意をもって取り除く(射る)ことを示しています。このように、最後まで気を緩めず、問題の根本原因を的確に排除することで、完全な解放と平和が訪れ、あらゆる面で良い結果(利しからざるなし)が得られます。問題解決の仕上げの重要性を示しています。

大象伝(たいしょうでん)– この卦の形から学ぶ、理想のあり方

原文(漢文):象曰。雷雨作、解。君子以赦過宥罪。

書き下し文:象(しょう)に曰(いわ)く、雷雨(らいう)作(おこ)るは解(かい)なり。君子(くんし)以(もっ)て過(あやまち)を赦(ゆる)し罪(つみ)を宥(ゆる)す。

現代語訳:象伝は言う。雷が鳴り響き、雨が降って万物が活動を始める(あるいは、緊張が解ける)のが解の形である。君子(人格者)はこれに倣(なら)い、過ちを犯した者を赦(ゆる)し、罪を犯した者を寛大に扱う。

ポイント解説:
雷が鳴り、恵みの雨が降ることで、これまでの緊張や停滞が解き放たれ、万物が生き生きと活動を始める。これが「解」の象徴です。これを見た君子は、「過を赦し罪を宥す」、つまり、過去の過ちや罪を犯した人々に対して、寛大な心で赦しを与えることの重要性を学びます。困難が解決し、新しい時代が始まる時には、過去の怨恨や対立を引きずることなく、全てを水に流し、人々が新たな気持ちで再出発できるよう、大きな度量で包容することが、真のリーダーの徳であると教えています。

【むすび】

雷水解の卦は、わたしたちが人生の様々な困難や束縛から解放され、新たな一歩を踏み出すための、力強くも温かい智慧を授けてくれます。

  • 1. あなたを縛るものは何ですか? – 小さな「解(かい)」から、心の自由を取り戻そう: わたしたちの心の中には、過去の失敗への囚われ、未来への過度な不安、あるいは自分自身で作り上げた固定観念といった、見えない「縛り」が存在するかもしれません。雷水解は、まずそのような小さな心の「結び目」に気づき、それを一つひとつ丁寧に「解きほぐしていく」ことの大切さを教えています。九四の爻が示すように、時には不要なこだわりや関係性(爾の拇)を思い切って手放す勇気も、大切な一歩です。
  • 2. 「夙(つと)にすれば吉(きち)」 – 問題解決の好機を逃さず、迅速に行動しよう: 卦辞が教えるように、困難が解け始め、行動すべき好機が訪れたならば、ためらわずに迅速に行動(夙にすれば吉)することが大切です。「後でやろう」「もう少し様子を見よう」と先延ばしにしていると、せっかくのチャンスを逃してしまうかもしれません。
    益々よくなるためには、時には思い切った決断と、タイミングを逃さない迅速な行動が求められます。
  • 3. 「過(あやまち)を赦(ゆる)し罪(つみ)を宥(ゆる)す」 – あなたの心を解放する、許しの力:大象伝の教えは、わたしたち自身の心の平和にとって、非常に重要なメッセージです。他者の過ちを許し、あるいは自分自身の過去の失敗を許すこと。それは、相手のためだけでなく、何よりもわたしたち自身の心を、過去の重荷から解放し、軽やかに未来へと進むための、かけがえのない「解」の行為なのです。この卦の道は、この「許し」という名の、心のデトックスから始まるのかもしれません。
  • 4. 「朋(とも)来(きた)りて咎(とが)なし」 – 解放の喜びを分かち合い、新しい繋がりを育もう:困難が解決し、心が解放された時には、その喜びを信頼できる仲間(朋)と分かち合いましょう。卦辞が示すように、そのような純粋な喜びの共有は、何の咎めもなく、むしろ新しい協力関係や友情を育む素晴らしい機会となります。わたしたちの旅は、一人で進むよりも、喜びも困難も分かち合える仲間と共に歩むことで、さらに豊かで、力強いものとなるのです。

雷水解の時は、わたしたちが過去の束縛から解放され、心身ともに軽やかになり、新しい可能性へと大きく羽ばたいていくための、素晴らしい転換点です。この卦の智慧を胸に、わたしたち自身の内なる「結び目」を解き放ち、許しと感謝の心をもって、今日からまた新たな一歩を踏み出しましょう。