【乾為天・初九】– 潜龍、まだ動かず
原文
「初九:潜龍勿用。」
書き下し文
初九(しょきゅう):龍(りゅう)潜(ひそ)みて用(もち)うる勿(なか)れ。
現代語訳
【初九】
龍はまだ水底に潜んでいる。今は動くべき時ではない。
意味とポイント
● 初九とは何か?
易経の爻は下から上に積み上げて読むため、「初九」はもっとも下の位置にある爻です。
乾為天は全て陽爻(九)で構成されますが、この初九は「潜龍」と表現され、まだ地上に姿を現していません。これは、潜在的な力を持ちながらも、まだ動く準備が整っていない段階を示します。
● 「潜龍勿用」の意味
「潜龍」は水の底に潜む龍。
龍は大空を駆ける存在ですが、この段階ではその力を隠しています。
「勿用」は「用いるな」、つまり 行動を起こすな という戒めです。
準備不足のまま動けば、せっかくの力を活かせず、かえって損をします。
● 成長プロセスにおける位置づけ
乾為天の六爻は、龍の成長物語です。
初九はそのスタート地点。
- まだ未経験で、力量も未知数
- 内に力はあるが、時と場が整っていない
- 環境や状況を静かに観察し、実力を養うべき時期
焦りや野心は成長の芽を摘みます。ここでのテーマは 「蓄える・備える」 です。
状況別読み解き
● 仕事
→ 今は大きな勝負に出るべき時期ではない。
昇進や転職、独立などに心が動くかもしれませんが、準備不足のままでは成果は半減。
実力を磨き、情報を集め、信頼関係を構築する時間に充てると良いでしょう。
✴︎アドバイス:表に出るより、舞台裏で力を整えよ。
● 人間関係
→ 急いで仲を深めようとしない。
人との距離をじっくり測り、お互いの価値観や信頼が育つまで静かに関わる時期。
無理に親しくなろうとすると、かえって距離ができることもあります。
✴︎アドバイス:信頼は時間とともに熟成する。
● 恋愛
→ まだ恋を進展させるタイミングではない。
出会いはあっても、焦って関係を深めると誤解やすれ違いの原因に。
相手を観察し、自分の気持ちも見極めてから動くのが吉。
✴︎アドバイス:恋の芽を急いで咲かせようとせず、水を与え続けよ。
● 内面(精神的成長)
→ インプットと内省の時期。
新しい挑戦や変化に惹かれるかもしれませんが、今は心の土壌を耕すとき。
学び・経験・観察を通じて、じっくり力を蓄えましょう。
✴︎アドバイス:動くことより“備える”ことを喜びとせよ。
● お金・豊かさ
→ 投資や大きな出費は控えるべき。
資金を動かすより、蓄える方向へシフトすることで、後のチャンスに大きく動けます。
今は種銭を増やし、流れを読む時期。
✴︎アドバイス:財布の龍も、まだ眠らせておけ。
一言アドバイス
「動きたい心を抑え、力を深く沈めよ。水底の龍は、時を得てこそ天を翔ける。」