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【八卦の詳解 】「坎(かん)」– 困難の深淵にこそ輝く『誠』の光で試練を越える

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【八卦の詳解 】「坎(かん)」– 困難の深淵にこそ輝く『誠』の光で試練を越える

1. 卦象(かしょう):

2. 名称(めいしょう): 坎(かん)

【坎】– 険しき流れ、試練の中に宿る「誠」の力

卦象と象徴

二本の柔らかな陰爻(- -)の間に、一本の力強い陽爻(—)が挟まれている姿。これは、まるで両側から危険や困難が迫り、その中心で一筋の光や、確かな意志が耐え忍んでいる様を表しています。あるいは、暗闇の中に閉じ込められた光、深い穴に落ち込んだ状態とも解釈できます。

自然界の象徴

水、険(けわしさ)、陥(おちいること)、河川、溝、湖、沼、海、

性質

陥険(かんけん)、険難(けんなん)、悩み、苦労、流れ、誠(まこと)、伏蔵、変化、流動、溺惑、憂慮、志し、矯正、思想、孕む、月徳、

人物における象徴

中男(ちゅうなん:次男)、盗賊、法律家、冷血漢、哲学者、科学者

動物における象徴

豕(いのこ、ぶた)、狐、馬

物質における象徴

酒、血、膏(あぶら)、ガソリン、弓、車、車輪、水晶、棟木、

物価相場

おおかた底値だが、陥ることからさらに下落
底をついてからの上昇の兆し

病象

坎を穴として 耳、口、肛門など
生理不順や、泌尿器、性病、下痢、下血、痔疾。
食中毒や、酒毒、服毒なども取象される

悪質性で、長引く場合や難症とみる

 

その他

天候 雨、または雪 どんよりとした降雨前の曇り 洪水や津波など

季節 冬

方位 先天図 西 後天図 北

数 易数 6 五行数 1、6

時間 午後11時から午前1時  (子の刻)

色 黒、赤

味 鹹味

 

物語

「坎」とは、行く手を阻む深い谷川であり、先の見えない心の悩みであり、そしてわたしたちが陥りがちな人生の落とし穴そのものです。それは、困難、危険、そして孤独を象徴します。しかし、「坎」のもう一つの、そして最も重要な姿は**「水」です。 水は、硬い岩をも長い年月をかけて穿(うが)つ強さも持ち合わせながら、どんな障害物にもその形を変えて柔軟に適応し、決して流れを止めず、そしてその最も深いところでは、全てを映し出すほどの静けさと、あらゆるものを洗い流す清らかさを保っています。そして何よりも、この卦の中心に輝く一本の陽爻は、どんな暗闇の中にあっても、どんな困難に囲まれても、決して失われることのない、わたしたちの「良心」「誠実さ」「真実の心(まこと)」**そのものの光なのです。

「習坎(しゅうかん)、孚(まこと)有り」の智慧 – 困難に「慣れる」のではなく、困難の中で「誠」を貫く

「坎」のエネルギーが二つ重なると、易経六十四卦の第二十九卦「坎為水(かんいすい)」となります。その卦の性質を説明する卦辞(かじ)には、「坎」の試練とどう向き合うべきかを示す、**「習坎(しゅうかん)、孚(まこと)有り」**という、非常に力強い言葉があります。

「習坎(しゅうかん)は孚(まこと)有り。心(こころ)を維(つな)げば亨(とお)る。行(おこな)けば尚(たっと)ばるること有り。」 (繰り返す困難(習坎)の時である。しかし、内なる誠実さ(孚)を持っていれば、心を一つに繋ぎとめ、集中することで(維心)、その願いや目的は通じる(亨る)。そして、その誠実な心に基づいて行動すれば、それは称賛されるべき立派な行いとなるだろう。)

「習坎」とは、単に「困難が繰り返される」という厳しい状況を指すだけではありません。「習」という文字には、「習う」「習熟する」という意味があります。つまり、「習坎」とは、困難の中で繰り返し学び、その対処法に習熟していく、という積極的な成長のプロセスをも意味しているのです。 そして、その中で最も大切なのが**「孚有り」**、すなわち「誠実さ」を持つこと。たとえ状況がどれほど絶望的に見えても、自分自身の内なる真心さえ失わなければ、心を一つに繋ぎとめ、必ず道は通じ、その行いは尊敬されると、易経は力強く説くのです。困難は、わたしたちの「誠」を試す試金石なのです。

 

【易経】第29卦「坎為水(かんいすい)」– 繰り返す困難の深淵で、誠の光を灯し貫く【易経】第29卦「坎為水(かんいすい)」– 繰り返す困難の深淵で、誠の光を灯し貫く 1. 卦象(かしょう): ䷜ ...

【わたしたちと「坎」の力】– 苦難の水を、智慧の泉に変える3つのヒント

では、わたしたちはこの厳しくも深い「坎」のエネルギーを、日々の「益々善成」のために、どのように活していけば良いのでしょうか。

  • ヒント1:「反身脩德(みにかえりとくをおさむ)」 – 外に進めない時こそ、内を磨く絶好の機会 人生において、どうにも前に進めない、八方塞がりだと感じる時。それは、「坎」がわたしたちに「今は外へ向かう時ではない」と教えてくれているサインかもしれません。そんな時こそ、外に向かっていた意識を、自分自身の内面へと静かに向けてみましょう。これまでの自分の行いを省み、人間としての徳を修める(反身脩德)。困難な状況は、わたしたちに深い内省を促し、人間的な深みと、本当の強さを与えてくれる、かけがえのない師なのです。
  • ヒント2:「水の如く」ある – 柔軟に適応し、希望の流れを決して止めない 「坎」の象徴である「水」は、わたしたちに多くのことを教えてくれます。水は、岩にぶつかればそれを避け、器に合わせてその形を変え、そしてどんなに細い流れになっても、決して進むことを止めません。わたしたちも、困難な状況に直面した時、頑なになったり、絶望して立ち止まったりするのではなく、水のようしなやかさで状況に適応し、小さなことからでも出来ることを見つけ、決して「より良くなりたい」という希望の流れを止めないこと。その粘り強い姿勢が、やがて活路を見出す力となります。
  • ヒント3:あなたの「中心の陽(まこと)」を、何よりも強く信じ抜く 坎の卦象の中心には、二つの陰に挟まれながらも、一本の力強い陽爻が輝いています。それは、どんな闇や困難に囲まれても、決して消えることのない、わたしたちの「良心」「誠実さ」「真実の心」です。状況がどれほど絶望的に見えても、他人が何を言おうとも、自分自身のこの内なる光を信じ抜き、その「誠」に従って行動する時、わたしたちは最も困難な状況さえも乗り越える、真の強さを発揮できるのです。

【むすび】深淵を越えて、人はより強く、より優しくなる – わたしたちの旅は続く

「坎」の智慧は、人生から困難をなくす方法ではなく、困難と共にどう生き、そこから何を学び、そしていかにして成長していくかを、わたしたちに教えてくれます。深淵を経験した者だけが知ることのできる、本当の強さと、他者の痛みに対する深い優しさ、そして揺るぎない智慧があるのです。

わたしたちの「益々善成」の旅は、常に順風満帆ではありません。時には、この「坎」の深い谷を渡らなければならない時もあるでしょう。

さあ、わたしたちも、人生の「坎」を恐れることなく、むしろそれを自己を磨き、内なる誠の光を再発見するための、尊い試練として受け入れましょう。あなたの内なる「まこと」を灯し続ける限り、どんなに深い谷にも必ず夜明けは訪れます。そして、その経験は、あなたをより輝かしい「益々善成」の境地へと、間違いなく導いてくれるのですから。